Noah International代表取締役、保育士 楠本真波(くすもと・まなみ)/長崎県佐世保市出身。東京・湾岸エリアで初となる長時間預けられるインターナショナルスクールを開業。当初は就園前までの3学年でスタートしたが、2021年度に年中・年長クラスも設置(撮影/写真映像部・東川哲也)
Noah International代表取締役、保育士 楠本真波(くすもと・まなみ)/長崎県佐世保市出身。東京・湾岸エリアで初となる長時間預けられるインターナショナルスクールを開業。当初は就園前までの3学年でスタートしたが、2021年度に年中・年長クラスも設置(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2023年4月24日号にはNoah International 代表取締役、保育士の楠本真波さんが登場した。

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 東京都江東区の湾岸エリアで2016年9月、インターナショナルスクール(保育園)「Kids Academy Noah」を開業した。最初の2カ月は園児ゼロ。3カ月目に1人入園してから少しずつ増え、半年後に10人に。スロースタートだったが、今やキャンセル待ちが出るほどの人気スクールへと成長させた。

 長崎県で生まれ育った。海外を飛び回る仕事に憧れ、英語を学びたいと高校時代に1年間、オーストラリアに留学。現地の幼稚園にボランティアに行き、保育士の仕事に興味を持った。都内の大学で資格を取り、卒業後にインターナショナルスクールに就職。娘2人を育てながら、数カ所のスクールで働いた。

 けれど、英語環境があっても、お散歩が毎日同じ公園だったり、月齢に合わない高度な学習カリキュラムが組まれていたり。我が子を預けたいと思うスクールには出合えなかったという。

「だったら、自分で作ろう、と。とりあえず動いてみることにしました」

 定款をイチから自分で作成し、物件を探した。不動産業者に相手にされないこともあったが、耐震に優れ、2方向避難路のある場所が見つかった。子ども用の小さなトイレも設置してくれるという。自然と開けていく道。

「行け、ということだなと思いました」

 目指したのは「英語環境」と、大切な子ども時代を満喫できる「豊かな経験」の両立。様々な国籍の先生を情熱と人柄を見極めて採用し、思いっきり遊ぶ保育スタイルを整えた。夏はプールを、秋は焼き芋を楽しみ、近所のスーパーにお買い物に出かけたり、伊豆大島まで足を延ばしたり。いつの間にか英語を口にするようになった子どもたちと一緒に駆け回り、大笑いする日々が幸せだ。

 開業間もない頃、ある人にこう聞かれたことがある。

「お勉強しないなんて、ではいったい何を学ぶんですか?」

 子どもらしく遊んで泣いて、ケンカして、個性と向き合うことこそが、生きる力を伸ばす学びになると確信しているから、ブレることはない。

 この春も多くの新入園児がやってきた。

「『I Love You』があふれる『北風と太陽』の太陽のような保育をするスクールでありたいです」

(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年4月24日号