AERA 2025年8月4日号より
AERA 2025年8月4日号より

 まずは自分が決して完璧ではないことを知ってもらい、その上で先輩としてアドバイスできることは伝えてみる、というやり方が僕には合っているのかな、と思うようになりました。いまの言葉で言うと「自己開示」ですかね(笑)。なんというか、ちょっと舐められるくらいがちょうど良くて。そうすると、「この人はかっこ悪さも隠さずに見せた上でアドバイスしてくれてるから、この人の言葉は一回ちゃんと聞いてみよう」と思ってもらえるような気がします。そう考えるようになったのは、ここ10年ほどですが。

 ただし、リラックスできる環境を作りながらもハードルだけは高く設定しておきたい。そこで一生懸命やって失敗したのなら、みなで和やかに笑って、「もう一度やってみよう」と声を掛ける。「後輩だから」「年下だから」と、下に見るのではなく、「同じ立場でやる」ということを大切にする現場にしたいな、と思っていました。

絶対に乗り越えられる

──「TOKYO MER」シリーズは、「他人を救いたい」という気持ちを描くことを大切にしてきた。当然、人命救助のシーンなどハードな撮影も少なくない。それでも、撮影前に不安を感じることはほとんどなかったという。

「できるだろうか」と思うことはもちろんあります。でも、何でもそうですが、とりあえずやってみるしかないですよね。やってみれば自分の限界もわかるし、当たり前ですがやる前はわからないわけですから。でも、少なくとも役を頂けているわけですし、今回はこれまでより遥かに大きなスケールの物語を脚本家の黒岩勉さんが書いてくださっている時点で、それは「あなたたちならできます」という愛のメッセージなのではないかと僕は思っています。

「TOKYO MER」の撮影中に感じたことですが、自分だけでは「どうしよう」と思っていることも現場に行くと、「私はこうしますね」「じゃあ、僕がここをやりますよ」とそれぞれがチームの一員として動いてくれる。今までの経験の積み重ねから「絶対に乗り越えられる」ということはわかっているので、不安はほとんどなかったですね。

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