我妻善逸(『鬼滅の刃』公式HP、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』より)
我妻善逸(『鬼滅の刃』公式HP、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』より)
この記事の写真をすべて見る

【※ネタバレへの注意】以下の内容には、既刊のコミックスと劇場版のネタバレが含まれます。

【画像】鬼殺隊「最強」と言われる“柱”はこちら

 新作劇場版「『鬼滅の刃』無限城編 第1章・猗窩座再来」は、壮絶な決戦の間で悲しみに満ちたエピソードが次々に語られる。テレビアニメシリーズ「柱稽古編」の終盤で示唆されていた、「雷の呼吸」の継承者である我妻善逸の悲劇もここで明らかになる。善逸はかねてから自分がたった1つの技しか使えないことを嘆いていた。しかし、この「技の欠損」は、無限城での戦いで大きな意味を持ってくる。その意味を、善逸の師である桑島慈悟郎にまつわる回想から考察してみる。

*  *  *

1つの技しか使えない善逸

 泣き虫でお調子者の剣士・我妻善逸は「雷の呼吸」の継承者である。無限城の戦いに至るまで、善逸は自分の実力をなかなか発揮することができなった。しかし、彼は戦闘中、緊張のあまり昏倒した時にのみ、「強い善逸」になることができた。

雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃

(我妻善逸/3巻・第23話「猪は牙を剥き善逸は眠る」)

 ただ、善逸は「起きている状態」では泣き言ばかりを言ってしまう。そればかりでなく、6つあるはずの「雷の呼吸」の技を1つしか使うことができなかった。残りの技も使えるようにと必死に努力しながらも、善逸は自分の至らなさを嘆く。

 肩を落とす善逸のことを彼の師である桑島慈悟郎は、こんなふうに励ましていた。

いいんだ善逸

お前はそれでいい

一つできれば 万々歳だ

一つのことしかできないなら それを極め抜け

極限の極限まで 磨け

(桑島慈悟郎/4巻・第33話「苦しみ、のたうちながら前へ」)

善逸と獪岳の“最強の師”

 桑島慈悟郎という男は、かつて「鬼殺隊最強」の称号を受け、鳴柱として活躍した人物だった。彼が教えた「雷の呼吸」の技は6つ。そして、彼の弟子は2人いた。前述の我妻善逸と、その兄弟子にあたる獪岳(かいがく)である。真面目だが、周囲となかなか打ち解けようとせず、鍛錬にばかりいそしむ獪岳は、“怠け者”の善逸のことを疎んじた。そして、皮肉なことに、この剣技の才にあふれた獪岳は、「雷の呼吸」を5つ習得できたにもかかわらず、善逸が使える「壱ノ型 霹靂一閃」だけが使えなかったのだ。

 獪岳と善逸。明らかに一般隊士よりも実力者である2人が、不完全にしか継承できないということから、「雷の呼吸」がいかに難しい技なのかということが察せられる。そして、同時に、現役時代の“桑島のすごさ”も想像できる。

次のページ 愛弟子に“鬼滅の刃”を向けねばならない