2018年、広島がリーグ3連覇を決め、胴上げされる当時の緒方孝市監督
2018年、広島がリーグ3連覇を決め、胴上げされる当時の緒方孝市監督

驚きの声が出たコーチ全員留任

 大失速でCSを逃した昨年オフ、コーチングスタッフ発表ですべてのコーチが留任していたため、メディアから驚きの声が出たことがあった。広島を長く取材するライターは複雑な表情を浮かべる。

「広島は伝統的にファミリー球団です。コーチ陣の大幅なてこ入れをするケースが少なく、広島OBを大事にする。だからこそチームの絆や結束力が強いと思うのですが、昨年の戦いぶりを総括し、巻き返しを図るチーム状況で、コーチの入れ替えがまったくなかったことに驚きました。結果が出なければ選手だけでなく、監督やコーチも責任を問われる世界です。チーム力を高めるためには、外部招聘などコーチの入れ替えをする必要があると感じたのですが……」

 コーチの入れ替えがチーム力を上げる手助けになったケースは、枚挙にいとまがない。広島で名コーチぶりを発揮したのが石井琢朗氏(現DeNA野手コーチ)だった。広島で現役引退後、13年から5年間コーチを務め、その後はヤクルト巨人、DeNAで指導に当たっている。

「個々の選手の技術を伸ばすだけでなく、打席でのアプローチ、得点を取るための戦術、守備や走塁改革など、広島に『勝つための哲学』を伝授してくれました。石井コーチの存在なくして16年からのリーグ3連覇は達成できなかったでしょう」(当時の広島を取材したスポーツ紙記者)

一気に上昇気流に乗る可能性も

 広島の選手力は、決して他チームに劣らないという見方が強い。他球団のスコアラーは「広島は歯車がかみ合えば、一気に上昇気流に乗る可能性を秘めている。打線はファビアンが入ったことで昨年より得点力が上がっていますし、リリーバーも森浦大輔、島内颯太郎、ハーン、中崎翔太、栗林良吏と力のある投手をそろえている。怖いチームであることは間違いない」と警戒を口にする。

 広島はこのままずるずると沈んでいくのか、それとも何かをきっかけに盛り返せるか。今年も現在2位・巨人と4.5ゲーム差、3位DeNAとは3ゲーム差で、CS進出は十分に狙える。決してあきらめる時期ではない。

(ライター・今川秀悟)

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