
木村拓哉、石原さとみ、水上恒司ら超著名な俳優陣を起用したCMやポスターを大々的に展開し、メガバンク最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が「エムット」という新たなブランドを立ち上げた。いったいどのようなサービスなのか。背景には、激化するメガバンク3行による個人客囲い込み競争がある。
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率直に申し上げれば、エムットがいったいどのようなサービスなのかを理解している人はまだ多くないはずだ。そのキャッチコピーから想像するに、「お金が関わるあれやこれや」を包括的にサポートするサービスらしい。
2025年6月のサービス開始とともに刷新された三菱UFJ銀行のアプリにログインしてみると、従来から存在していたクレジットカードやローンのメニューに加えて、完全子会社化した三菱UFJ eスマート証券やロボットアドバイザーのウェルスナビ、プリペイドカード発行・運営のバンドルカードへのリンク機能が搭載されていた。リクルートと共同出資した企業が運営するスマートフォン決済「COIN+(コインプラス)」にも、近いうちにリンクが張られるという。
ただ、2026年度中に導入を予定しているサービスや機能も散見されるのも確かだ。同じくメガバンクの一角である三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)がいち早く2023年3月にモバイル総合金融サービス「Olive」を立ち上げ、快進撃を続けてきたことを意識したのかもしれない。
2年で500万口座を突破した「Olive」
「Olive」とは、クレジットカードと預金口座とを一体化させるとともに、証券や保険などの多様な金融商品をスマホで一元管理できるサービスだ。しかも、1枚のカードにキャッシュカードとクレジットカード、デビットカード、ポイント払いなどの多彩な機能が搭載され、アプリ上で簡単に切り替え(使い分け)が可能であることも画期的だった。
サービス開始から2年で500万口座を突破した「Olive」だが、真に飛躍を遂げたのは2024年の4月以降だと指摘するのは、ポイント情報サイト「ポイ探」を運営する菊地崇仁さんだ。
「三井住友カード独自のポイントサービスだったVポイントは、さほどメジャーな存在ではありませんでした。もっと多大なユーザーを抱えていたTポイントと統合したことによって、一気に勢力を拡大した格好です」
もともと還元率の高かったVポイントだが、「Olive」では通常7%、最大20%という魅力的な条件を提示(適用条件あり)。その点も大きな訴求材料として口座獲得に貢献したようだ。出遅れたMUFGも通常7%、最大20%の還元率を掲げて対抗しているものの、現時点では様々なポイントサービスが混在しているうえ、先述の還元率を享受できるのは三菱UFJカードの会員向けの「グローバルポイント」だけに限定されている。