
女性は適齢期に結婚し、子どもを産むといった生き方が多かった時代から、結婚以外の選択をする人が増えている。実際に『おひとりさま』として生きていくことを選んだ人の決断の経緯とは。AERA 2025年8月4日号より。
* * *
「結婚は究極にめんどくさい」
こう話すのは50代の会社員女性だ。周りの既婚者から聞こえてくるのは夫や夫家族への恨みやつらみ、不満ばかりで全然幸せそうに見えないからだという。
「義母の介護を引き受けていても旦那からただの一度も『ありがとう』がない、メンタル不調の夫に借金発覚、子どもはいじめからの登校拒否とひきこもり、生活保護受給中の義父から金の無心をされるなどそういう話ばかり。ああ私はそんな人生送りたくない!って思ってしまいます」
今は仕事をしながら自分のためだけの人生を謳歌中だ。
「会社帰りに時間を気にせず寄り道し放題。観たい映画を好きな曜日の好きな時間に観られる。誰かの食事の世話をする必要もない。『今日は夜ご飯食べてかーえろ』だってできるし、推し活で遠征、宿泊も支障なし。自分のお金をどこでどう使っても誰からも文句を言われない。シングルって完全に自由です!」
そんな女性も、結婚を完全に否定していたわけではない。40歳を前に結婚相談所に登録したこともある。婚活を通して「結婚」に向き合い、「したくないな」と悟ったのだという。家事や育児、介護の負担が圧倒的に女性の方が大きいというのが大きな理由だった。とはいえ「自分の死んだ後の諸々の処理や、老後など心配な面はある」とこぼす。
「憧れる女性はオノ・ヨーコさん」という54歳の独身女性も「一人は自由で、人生は自分次第」が良いと感じる一方で、「全て自分で決断しなければならない」という一人の重さを感じている。不安なのは「誰かのために生きるというモチベーションがなく、無条件で味方になってくれる存在がいないこと」だという。
「でも人々の考えがこれだけ多様化しているので今後も『おひとりさま』は増えていくと思います。その選択をした時にこれまでよりも尊重する風土ができてくると思うし、そう願います。旅館など一人で泊まりにいっても怪しまれずに泊めてくれる文化ができたらいいなぁ」
(編集部・大崎百紀)
※AERA 2025年8月4日号より抜粋
こちらの記事もおすすめ 【もっと読む】「選択的おひとりさま」を支える社会制度の充実は急務 結婚してもしなくても自分で選んだ人生を引き受ける