「言葉を食わせる」ことが大事

 さらに言えば、実際に食べた人の会話だって広げられます。

 家庭で「無水油鍋」を食卓に出したら、どんな感想が出るでしょうか。

 「この鍋、水を一滴も入れてなくて、白菜の水分だけで煮てるんだよ。すごくない?」

 「これならキャベツがいくらでも食べられるよね」

 「リュウジって人が世界一うまいって言っていたけど、どうかね。確かめてみよう」

 そんな風に会話のきっかけになるわけです。一人暮らしの人でも、「試しに作って味を確かめてみた」とか言って、SNSに料理の写真をアップする最初の取っかかりにもなります。

 言葉を調味料として使ったことで、感想を伝え合うきっかけができて、自炊にハマる人が増えていく。これは仮定の話でもなんでもなく、実際に俺のもとにそういった体験談が送られてくるんです。

 だから実感としてよくわかります。料理研究家は、タイトルやネーミングといった言葉を食わせることがすごく大事なんです。俺よりうまい料理を作る人もいるかもしれないけど、基本はやっぱり伝え方です。

(リュウジ・著『孤独の台所』では、YouTubeのマーケティング戦略、クリエイターとしての信念など、年商8億円のチームを率いる彼の仕事論を語っている)

孤独の台所
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