
言葉は“調味料”の一つ
これまでの料理研究家なら、自分で「至高」だとか「無限」といった強気な言葉を使うことに抵抗を感じて当然でしょう。ましてやレシピ本のタイトルにこうした言葉を使った人は、おそらくいないと思います。
『至高のレシピ』を出版するにあたって、似ているタイトルがないか、ヒット作を中心に家庭料理のレシピ本を可能な限り調べましたが、見つけることはできませんでした。もしかしたらずっと昔に強気なタイトルのレシピ本が出版されているかもしれませんが、少なくとも当時の出版市場では見つけられませんでした。
だけど俺は、「こんなタイトルを付けたら読者をだますことになってしまう」とは考えませんでした。
なぜなら、言葉もまた、〝調味料〟の一つだからです。
「無限キャベツ」は、これまでの業界のお作法に従えば、「湯がけキャベツの千切りしらすごま油あえ」です。
でも、こう伝えたところで誰が再現して食べてみようと思うでしょうか?
「合法たまご」と名付けた理由
めちゃくちゃバズった「無水油鍋」も、確かに水は一切使っていないけど、より厳密に言えば酒や白だしといった調味料で少量の水分は加えています。
これも正確さを優先して「ごま油風味白菜鍋」としてみましょう。いったいどれだけの人が、再現してみようと意欲をかき立てられるでしょうか。
韓国発のレシピでSNSでも大流行していた「麻薬たまご」という料理がありました。半熟のゆで卵を韓国風のタレに漬け込むシンプルな料理ですが、「麻薬」という言葉を使うのには、ちょっとキツい印象がありました。
俺のレシピは多くの人に届いてほしい。だから、タレの味を大幅に変えて「合法たまご」と名付けました。
どれも俺が付けた名前のほうが、料理の魅力や特徴をダイレクトに伝えられているし、作ってみたいと思う人は増えるはずです。