福間香奈女流王座(左)と西山朋佳女流三冠(当時)=2025年3月5日、東京都渋谷区の将棋会館
福間香奈女流王座(左)と西山朋佳女流三冠(当時)=2025年3月5日、東京都渋谷区の将棋会館
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年7月28日号より。

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 将棋の女流棋界では現在、八つのタイトル戦が存在する。タイトル保持者は福間香奈女流六冠(33)と西山朋佳女流二冠(30)の2人だ。

 両者にはいくつもの共通点がある。将棋史上、女性としては最高レベルの実力を有すること。振り飛車を得意とし、観戦者を魅了する華やかな棋風で、多くのファンがいること。かつては棋士養成機関・奨励会に所属し、三段まで進んだものの、あと一歩で棋士の資格を得られる四段にまでは届かなかったこと。一般公式戦に出場し、男性の棋士を相手にも好成績をあげ、棋士編入試験(五番勝負)の受験資格を得たこと。そして惜しくも試験では敗退し、女性として初の棋士昇格はならなかったこと。これらは熱心なファンの皆さんであれば、よくご存じのことだろう。

 今年2025年6月、白玲位を通算5期獲得した女性に、棋士四段(フリークラス)の資格が与えられる案が棋士総会で可決された。その賛否については多くの声が聞かれた。筆者の個人的な見解としては、歴史が大きく前に進んだと見たい。そしてこの決定が高く評価される未来が訪れることを祈りたい。

 ヒューリック杯白玲戦は2021年度から開始されたもっとも新しい棋戦だ。女流タイトル戦の中で序列は1位。同時に創設された女流順位戦(全4クラス)で最上位A級の成績最優秀者が白玲に挑戦するというシステムだ。新女流棋士ならばD級からA級まで昇級し、白玲位を通算5期獲得するまでには最短でも10年。ハードルとしてはかなり高い。

 新設のルートで当面、もっとも棋士昇格の可能性が高いのは、これまでの白玲位保持者である西山(3期)と福間(1期)だ。今期女流順位戦A級では福間が8勝1敗でトップの成績をあげた。西山白玲に福間挑戦者がいどむ第5期白玲戦七番勝負は8月30日に開幕する。(ライター・松本博文)

AERA 2025年7月28日号

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