童磨と栗花落カナヲ・嘴平伊之助の戦いは、どうして胡蝶しのぶとの戦闘後に行われたのか。無限城内のコントロールを無惨と鳴女がある程度握っていたと仮定するならば、戦闘経験の浅いカナヲたちから殺害する方が、鬼側には優位だったはずである。しかし、しのぶとの戦闘が先でなくてはならなかった。これは、しのぶ戦、カナヲ・伊之助戦をそれぞれ丹念に読んでいくことで、その理由が浮かび上がってくる。

 我妻善逸と獪岳のように、「兄弟弟子対決」というあからさまな理由がある場合をのぞいては、「対決の組み合わせ」にまつわる因果は複雑に絡みあっている。

 本書では、そういった〝ねじれ〞を1章ごとに解きほぐしていく。そうすることで、「無限城の戦い」が私たち読者に与える感動の実相について論じていきたい。

《鬼殺隊と上弦の鬼は、無限城の死闘で何を考えたのか? 新刊『鬼滅月想譚 ――「鬼滅の刃」無限城戦の宿命論』では、猗窩座vs冨岡義勇をはじめ、悲しみの対決に込められた意味を紐解いている》

こちらの記事もおすすめ “鬼殺隊最強の剣士”の弟子「獪岳」はなぜ善逸を許せなかったのか…新作映画「無限城編」の謎
[AERA最新号はこちら]