女性候補者たちへの嫌がらせが相次いで報じられている(写真はイメージ/gettyimages)
女性候補者たちへの嫌がらせが相次いで報じられている(写真はイメージ/gettyimages)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回はこの夏の参院選と女性候補者への嫌がらせについて。

【写真】迫る参院選、演説に耳を傾ける聴衆たち

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 韓国の大統領がパク・クネ氏だったとき、政権批判をする一般男性と話したことがあった。興味深かったのは彼が「女性大統領を批判する際にも、気を使うようにしている」と言っていたことだ。たとえば「ババア」といった年齢を貶めるような言い方や、容姿や服装をあげつらうようなことは絶対に言わないようにするのは当たり前。その上で、「感情的だ」「気分屋だ」「リーダーシップに欠けている」といった、これまで女性がさんざん言われてきたステレオタイプな批判を向けないようにしているのだ、と。

 もちろん実際に“彼女”が「感情的」であるならば別だが、この社会には女と男に向けられる評価のダブルスタンダートがあることを意識しなければいけない、という話だ。感情的な女は徹底的にバカにされるが、たとえば男が多少感情的になったとしても「熱い男だ」とか「情熱的だ」と褒められる。「気分屋だ」と女をバカにする同じ口で、「彼の行動は計り知れない」と「気分屋」の男を恐れたりもする(トランプさんへの恐怖とか、そんな感じですよね)。そんなふうに、自分の中にあるかもしれないダブルスタンダードを意識した上で批判をする。女性差別が「文化」「歴史」に組み込まれている社会だからこそ、男だからこそ、相手が女性だからこそ、気を付けたいのだ、という話だった。

 で、日本である。

 参議院選挙中の女性候補者への嫌がらせが苛烈化している。左右問わず、保守だろうが革新だろうが、女性であれば女性であることで攻撃されているかのようである。

 埼玉県川口市の駅前で演説をしていた杉田水脈氏に対し、「ヘイトスピーチを許さない」という男数人が怒声をあげていた。がなりたて、脅し、威嚇し、威圧する姿は、ただ動画で見ているだけでも胸がざわつく。杉田氏の目前までやってきて、大きな身体で上から見下ろすようにして杉田氏に怒声を浴びせる姿は、単純に暴力である。しかも彼らは杉田氏を支援する女性に対して「ババア」という言葉を投げかけたりもする。自分と違う考えの女に対しては何をやってもいいと心から信じているようであり、「騒ぎを起こす」こと自体を目的としているかのようで杉田氏に演説をさせない。

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