今夏は八代目尾上菊五郎(中央)と、その息子の六代目尾上菊之助の襲名披露口上が大阪松竹座の夜の部で予定されている
今夏は八代目尾上菊五郎(中央)と、その息子の六代目尾上菊之助の襲名披露口上が大阪松竹座の夜の部で予定されている
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 作家・吉田修一さんの同名小説(朝日新聞出版)を吉沢亮主演で映画化した「国宝」。歌舞伎役者の生涯を描いた圧巻の作品に惹き込まれ、実際に劇場へ行きたくなった人のために、おすすめ演目を紹介する。AERA 2025年7月21日号より。

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 イキのいい若手を見るならば、ゲームを原作とした新作歌舞伎のひとつ「刀剣乱舞」という手もある。中村獅童(52)を上置きに、尾上松也(40)、中村歌昇(36)らの若手が7月は新橋演舞場、8月は博多座、京都・南座の舞台に上がる。

新作歌舞伎の躍動感

 ただ、私から見ると、新作歌舞伎から入った人たちは、必ずしも古典歌舞伎につながらない。違うカテゴリーなのだ。できれば古典から入って欲しいとは思うが、昨年11~12月、新橋演舞場で上演された新作歌舞伎「朧の森に棲む鬼」は様相が違った。松本幸四郎(52)、中村時蔵(37)、尾上松也、尾上右近(33)、市川染五郎(20)といった役者が躍動。この芝居に魅了された若い女性が古典にも足を運んでいる。

 秋には、映画「国宝」に登場した演目が10月の名古屋・御園座で見られる。舞踊劇「京鹿子娘二人道成寺」だ。今回は尾上菊五郎・菊之助親子による襲名披露狂言でもある。

 5月の歌舞伎座ではこの2人に坂東玉三郎も加わって「三人道成寺」が出て華やかで楽しかったが、「二人道成寺」の方が演出も濃密であり、絶対に間違いのない演目だ。このところ、11歳の菊之助の踊りには感心させられており、名古屋まで足を運ぶ価値はある。

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