リュウジ・著『孤独の台所』(朝日新聞出版)
リュウジ・著『孤独の台所』(朝日新聞出版)

本当に嫌だった理由は……

 俺が嫌だと感じたのは、お互いにリスクを取らないことを良しとする姿勢です。

 フォロワーが10万人いたらリスクを負わなくて済むと出版社側は思っている。「これは失敗しないですよ」と言いながら会社のなかで稟議(りんぎ)を通していく。

 でも、ノーリスクでうまくいくプロジェクトなんてこの世にはありません。

 フォロワーが多くても、本が売れないことはありえます。

 結局、お互いにリスクを取って結果をつかみにいくという姿勢からしか良いものは生まれません。

 最後はこの人に賭けたいとか、熱量を持った人と一緒に仕事をしたいと思えなければ、どうせプロジェクトは失敗するし、「こいつは売れなかった」といった後悔と恨みしか残らないのです。

 だから俺は、最初の出版社の企画を断りました。大手の出版社だったけど、何年か待たされるのはごめんだなと。

 その後、他にも何社かからレシピ本の企画書が届きました。その度に俺は「今、出版できますか?」と聞いたんです。フォロワー数は1万人ですよ、と。

 そうしたら、企画書を送ってくれた扶桑社の編集者は「内容が良ければ売れます」と返してきました。

 俺は内心、またどうせリスクを負わないための口実なんじゃないのと疑っていました。どこかのタイミングで「まだ内容が良くない」とか言って、本が出せないというオチになるんじゃないかと思っていたんです。

 ところが、次の言葉に驚くことになります。

「2〜3日いただいてもいいですか? 企画を通してきます」

 しばらく待っていたら編集者が企画を通したと告げてきて、一気に撮影まで含めたスケジュールを組み、本を作ることになったのです。

(7月18日発売の新刊、リュウジ・著『孤独の台所』から一部を抜粋)

孤独の台所
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