
とはいえ、クリスチャンでもなく信仰の意味もわからない自分が、三浦綾子の作品を朗読するのは──。その矢先、堀井のもとに1通のメールが届いた。それは三浦の『泥流地帯』の舞台となった、北海道上富良野町からだった。「三浦綾子読書会」と縁があり、この町で朗読をやってもらえないか、とのメール。なんというタイミング!
堀井の印象について、深作はこう語る。
「彼女が一過性の、始まったら戻れない、身投げのような感覚を楽しめる人であるのは、もう見てきてわかっています。今までも、稽古と本番ではまったく別人で『ズルじゃん! できるじゃん!』って瞬間を見せつけられた。演劇というアートは、朗読と異なり、ひとりではできません。今回、勇気を持って変わってくださった」
「朗読の勉強やってみたら」 負荷かけ本物に近づきたい
これまでにも堀井は、あちこちの場面で、「あれもやりたい、これもやりたい」と語っている。
「羨ましいです。50代でやりたいことにこれほど意欲的でいられるって、かっこ良すぎませんか?」
そう語るのは、田中みな実。元TBSアナウンサーとして、堀井の14年後輩にあたる。新人研修の講師が堀井の担当だった時には、安堵感を覚えたのを思い返すという。初めての共演は、土曜の番組「みのもんたのサタデーずばッと」だった。田中は振り返る。
「物腰の柔らかい、ご自身のまとう雰囲気は変わらないのですが、ニュース原稿やナレーションを読む時、急にパッと空気感が変わる。お声のトーンも原稿に合わせて瞬時に変わる。声をつくっているわけではなく、自然と入っていくような。『うわあ、かっこいい!』と、隣で息を呑みました」
(文中敬称略)(文・加賀直樹)
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