「一人は二十歳そこそこの学生。購入代金は親に負担してもらった可能性もありますね。20代後半のもう一人は、中国で映像関連の仕事をして自分で稼いだお金だと話していました。日本でのビジネス拠点兼住居に使うそうです。2人ともリュックに数千万円の現金を詰め込んで契約に臨んでいました」
中国人富裕層といえば、投資目的で都心のタワマンを「爆買い」するイメージがあるが、男性によると、こうした超富裕層向きの都内の物件は数カ月前から在庫がダブつき気味だという。一方、3千万~5千万円台の山手線沿線近くの中古マンションを購入する中国人の動きは依然活発で、その背景には中国人の「資産移転」の動きがあるのでは、と男性は指摘する。
「日本の不動産価値は安定しているため、富裕層に限らず、資産として魅力的なんだと思います。物価高で日本の貨幣価値は落ちていますが、不動産の価値は変わらないためインフレの分だけ不動産価格は上昇しているのが足もとの状況だと見ています」
歴史的な円安で日本の不動産が割安になったのに加え、中国は不動産バブルが崩壊して市況が冷え切ったことも日本への「資産移転」が進んだ背景に挙げられる。
永住権や国籍のない外国人も、日本で不動産を購入するハードルはそう高くない。「観光ビザ」で来日した非居住者も、日本在住の友人・親族などの「日本国内における連絡先」を確保しておけば不動産を購入できる。さらに、永住権を得やすくなる「経営・管理ビザ」を申請するケースも増えている、と男性は言う。
「資本金500万円と事業計画を提示すれば合法的な在留資格を取得できるため、ビジネスだけでなく、移住手段としても注目されています」
参院選では外国人の急増を問題視し、極端な排外主義を唱える声も一定の支持を得ている。しかし男性は、中国人との不動産取引について「仲介業者もしっかりしており契約手続きを含めてこれまでトラブルはありません」と強調する。
「民泊施設を運営する中国人社長の知り合いもいますが、『いつでも見学に来てください』と常にオープンで、地域で摩擦を生まないよう努力しているのが伝わります。日本人であろうと外国人であろうと、ビジネスの相手として大事なのはルールの順守。そこを見極めて取引しています」
(AERA編集部 渡辺豪)
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