古賀茂明氏
古賀茂明氏
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 多くの人が関心を持っているのに、参議院選挙の争点にならないテーマがある。

【写真】台湾の街中で行われている軍事演習の様子はこちら

 外交安全保障政策、とりわけ台湾有事への対応である。

 これに関して、共産党、れいわ新選組、社民党の公約は自公政権のそれとは一見して異なる。しかし、残念ながら国会の議席数が少なく外交安保政策への影響力は極めて弱い。

 では、最も大きな影響力を持つ野党第1党の立憲民主党と自民党の間では、何がどのように違うのだろうか。

 自民は安倍晋三政権以降石破茂政権まで一貫して戦争を現実に可能とする政策を進めてきた。集団的自衛権の行使容認、敵基地攻撃能力の保有、防衛費の倍増、米軍と自衛隊の一体化推進など、戦争の準備だとわかる政策が堂々と積み重ねられている。

 立憲の公約を見ると、実は、自民のそれと大きな違いがない。

 立憲中心の政権ができた時、日本の外交安保政策は変わりそうに見えないのだ。

 こう言うと、外交はある程度継続性が必要で、それが大きく違う政党間で政権交代があり政策が大きく変わると、外国の信頼を失い、日本の国益を損なうという意見が出る。

 しかし、米国を見てほしい。TPP離脱、パリ協定離脱など、彼らは、簡単に過去の約束を破る。今日では、昨日言ったことと今日言うことが正反対でも誰も驚かない。そんな国と付き合うのに、日本だけは、外交政策を変えてはいけないと言う方が、馬鹿げている。

 そう考えた時、今私が一番知りたいのは、各政党が、米国との関係をどのようにしたいのかということだ。ただし、これまでの米国一辺倒からより米国からの自立を目指すと全ての野党は言うだろう。

 そこで、もう少し具体的に目の前にある問題について質問してみたい。

 まず、日本の防衛費を最大どこまで増やすのか。

 第2に、台湾有事の際、米軍と共に中国と戦うことも辞さないのか。

 第3に、日中関係をどうするのか。

 これらは、日米関係を大きく変える可能性を前提とした質問であり、また、それぞれ関連している。台湾有事で戦争も辞さずとするなら、防衛費の増額はかなり巨額になるだろう。その場合、日中関係では戦争になる可能性を排除しないということになり、その前提に立てば、中国との関係を深化させることは極めて難しくなる。

 自民は、米国との同盟関係をさらに強化する方針を堅持し、防衛費は最低でも米国が要求するGDP比3.5%ないしそれを超える額を目指すであろうことが容易に想定できる。また、台湾有事の際、中国との戦争を辞さないということもわかる。そうした有事の際に中国との経済関係が大きいと困るので、必然的に経済関係も拡大するわけにはいかないということになる。日中関係もそれを前提にしたものにならざるを得ない。

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