7月9日から台湾で行われている定例軍事演習「漢光」の実動訓練(写真:ロイター/アフロ)
7月9日から台湾で行われている定例軍事演習「漢光」の実動訓練(写真:ロイター/アフロ)

自民も立憲もどの党も口をつぐむ台湾有事

 もちろん、中国側も、米国だけでなく、日本に対しても警戒を強めるであろう。

 自民がそういうことを正直に言うことはないが、それが本音の自民の外交安保政策である。少なくとも論理的に考えればそういうことになるだろう。

 一方の最大野党の立憲はどうなのか。立憲の「あなたを守り抜く、8つの政策」というタイトルの参議院選挙の公約には、「外交・安保・経済安全保障」の項目がある。

 米国との関係については、「専守防衛に徹しつつ、日米同盟を深化させます」としているが、日米同盟を深化させながら、専守防衛に徹することなど無理だ。また、「防衛力を抜本的に強化します」としているが、これは、防衛費大幅増額につながる点で自民と同じだ。その一方で「防衛増税は行いません」と書くが、増税なしに抜本的軍事力拡大など無理で、全く信用できない。基本的に自民と同じ考えだとしか思えない。

 これだけ台湾有事が大きな問題になっているのに、それについても触れていない。「両岸問題が平和的に解決されることが何よりも重要」「そのための外交努力、平時からの安全保障協力、……を進めます」と書いてあるが、台湾有事にどうするかは書いていない。ただしヒントはある。「平時からの安全保障協力」という言葉だ。国家として承認していない台湾との間の直接の「安全保障協力」に言及した。特に「平時からの」という言葉からは、その延長線上に「戦時」すなわち「台湾有事」における安全保障協力を想定していることが窺える。自民党でさえ、「安全保障に資する日台間の非軍事的な交流実績を積み上げ」としか言っていない。安保協力を行うとまでは言えないのだ。しかも非軍事という限定まで明示し慎重な態度である。両者を比較すると、台湾有事においては、立憲の方が主戦論の先鋒となるのではないかとさえ感じてしまう。

 日本維新の会や国民民主党も台湾有事については口をつぐんでいる。防衛費の増額についても立憲同様、国民負担はなさそうなことを言うが、防衛費拡大に反対とは書いていないので、やはり信用できない。

 共産、れいわ、社民以外で、自民の安保政策に対して明確な反対姿勢を示す政党がないということは、参議院選挙の結果がどうなろうとも、自民党的な外交安全保障政策が継続されると考えた方が良いということだ。

 その場合、一番心配なのは、やはり台湾有事である。

 ヘグセス米国防長官は、3月の訪日時に、「日本は西太平洋で我々が直面する可能性のあるあらゆる事態の最前線に立つことになる」と述べた。それを前提に、日米の軍事一体化はどんどん進んでいる。

次のページ 「いざとなったら戦争も辞さない」政治家