
先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年7月9日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。
【コレがカラクリ】なぜ国の統計より収穫量が少なくなるのか【証拠写真】
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「10年に1度」レベルの猛暑だ。気象庁は7月7日、「高温に関する早期天候情報」を発表した。一方、小泉進次郎農林水産相は6月、「作況指数」の廃止を発表。長年指摘されてきたカラクリのある指数の廃止は意味あることだが、実はコメにはさらに大きな問題が残されている。
昨年の作況指数は「105」なのに
「数字から見れば『豊作』ですよ。でも、この周辺の農家で、『昨年は米が取れた』という人は誰もいない。つまり、農水省がいうことと、生産現場の実感が合っていないんです」
千葉県匝瑳(そうさ)市にある栄営農組合の伊藤秀雄顧問はそう話した。
2024年、千葉県の「作況指数」は105だった。
作況指数とは「米の出来具合」を表す指標で、10アール当たり平年収量(600キロ前後)に対する当年の同じ面積当たり収量を表す。平年を100とした指数で、おおまかにいうと、それ以上は「良」、以下は「不良」となる。
農水省の統計に「カラクリ」
全国の作況指数は2023年、24年とも101と「平年並み」で、収穫量は23年産米が661万トン、24年産米は679万2000トン。この数字を基に、農水省は一貫して「米不足は生じていない。流通に問題がある」と、主張してきた。
これに対して、伊藤さんは「収量調査の方法が間違っている」と指摘する。
農水省は、全国から無作為抽出した約8000カ所の水田で、3平方メートルの米を刈り取り、収量を調査する(通称「坪刈り」)。その際、1.7ミリのふるい目幅で選別した玄米の重量を計測し、この値を基に全国の「10アール当たり収量」が算出される。
「ところが、ふるい目の大きさは地域や米の品種などによって異なり、千葉県では米を選別する際に1.8ミリのふるい目を使用することが一般的です。当然、千葉県で選別された実際の収量のほうが、農水省が出す統計上の収量より少なくなる」(伊藤さん)
