さらに気になるのが大型契約を結んだ時の発言である。2019年のオフには生涯ホークスを宣言して7年の大型契約を結んで残留。その時には契約終了後に引退を示唆するコメントも出しているのだ。契約が切れるのは来シーズンであり、この時の発言通りであれば来シーズン限りで引退という可能性もあるのだ。

 柳田の現状を見て思い出されるのがチームの先輩で同じ2006年から7年契約を結んだ松中信彦(現・中日打撃コーチ)だ。松中も7年契約の6年目から故障もあって成績が低下。契約終了後もチームに残留したが、その後の3年間ではわずか合計6安打で1本のホームランも打つことができずに2015年限りで退団し、そのままユニフォームを脱ぐこととなっている。そんな松中の姿を間近で見てきたことも、柳田の長期契約終了時に引退を示唆するコメントに繋がったのではないだろうか。

 ただ、その豪快なスイングをこれからも見続けたいと感じているファンは多いはずで、今年の開幕当初の打撃を見てもまだまだ余力は残されていることは間違いない。過去にも怪我を乗り越えて復活したという経験があることも大きなプラスである。ちなみに現時点での柳田の通算安打数は1605本となっており、本来の調子を取り戻すことができれば2000本安打も十分達成可能な数字である。球団の歴史に残る大打者がその晩年をどう迎えるのか。今シーズン、そして来季以降の柳田の動向に引き続き注目したい。

(文・西尾典文)

こちらの記事もおすすめ ソフトバンクの35歳・元エースに復活の兆し FA権行使なら「ほしい」と他球団が熱視線
[AERA最新号はこちら]