木村花さん(右)と母・響子さんのツーショット(写真:響子さん提供)
木村花さん(右)と母・響子さんのツーショット(写真:響子さん提供)
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 5年前、まさに大輪の花のような笑顔で愛された女性が、自ら命を絶った。木村花さん、享年22。プロレスラーとしてスター街道をひた走っていた彼女は、フジテレビの番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」(テラスハウス)への出演を機に、SNS上での苛烈な誹謗中傷に遭っていた。花さんの母で元プロレスラーの響子さんは、「出演者の心身の健康への注意や配慮を怠った」として、フジや番組の共同制作会社を提訴し、裁判は今も続いている。「フジがしたことは人権侵害」と訴える響子さんは、番組出演を通じて花さんが追い詰められていった様子を証言する。

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――テラスハウスは、シェアハウスでの男女6人の共同生活を観察するリアリティー番組です。花さんはどのような思いで出演を決めたのでしょうか。

 オーディションに合格した時は、ずっと好きだった番組に出演できると喜んでいました。プロレスを多くの人に知ってもらうきっかけになればという期待もあったでしょうね。花はよく、「自分のプロレスで困っている人やマイノリティーの人を元気にしたい」と言っていました。父親がインドネシア人というミックスルーツによって、時に差別を受けてきたからこその願いだと思います。

 ただ、花のテラスハウス出演について、私は複雑な気持ちでした。テラスハウスは当初は爽やかな青春物語でしたが、次第に過激な炎上番組へと姿を変えた印象があったので。でも本人が張り切っている手前、水を差すようなことは言えず、とりあえず見守るスタンスでいようと決めました。

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