独身者に「休む理由」がない
「休み」についても、「独身者が損している」という思いにとらわれる人は少なくないようだ。
「子どもがいる人は、産休・育休に始まり、子どもが熱を出したとか学校行事の理由でも公に休んでいい雰囲気があるけれど、独身者の場合、公に認められている“休む理由”がない。結局、休む人の尻拭いをするのは独身者になりがちで、“それってフェアじゃない”という感情になって当然だと思うんです」
こう話すのは、飲料メーカーに勤める女性(38)だ。自身もこれまで、子育て中の社員の代わりに急遽仕事を任される場面が多くあった。上司から「○○さんは、子育て中だから仕方がない」「協力してあげてね」という声をかけられるたびに、「独身の私たちには断る権利がないのか?」という複雑な思いがこみ上げた。
単身者に合わせた制度設計は?
だが、その独身者は増加している。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2020年時点の全国の単身世帯の割合は38%だが、50年には27都道府県で4割超にも上ることが予測されている。50歳までに一度も結婚しない人の割合は、20年時点で男性が28.25%、女性が17.81%に上る。
単身世帯増加とセットで語られるのが、婚姻率の低下や晩婚化、晩産化などを背景とする「少子化」だ。現在、少子高齢化が深刻化するなか、国をあげて少子化対策や子育て支援に力を入れているが、「単身者」はその陰で置き去りにされがちではないだろうか。
実際、先の女性のように、「独身だからという理由で、蔑ろにされている感じがする」という声は多くの単身者からあがった。
確かに、数こそ増えたとはいえ、「単身者」に合わせて制度が設計される気配はあまりない。単身者の声もほとんどの職場で聞いたことがないのが実情ではないだろうか。いったい何が起こっているのか。次回は「お金」の面から考察する。
(ライター・松岡かすみ)
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