単身世帯は増えているのに、単身者に合わせた制度設計は?(写真はイメージ/gettyimages)
単身世帯は増えているのに、単身者に合わせた制度設計は?(写真はイメージ/gettyimages)
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 日本における単独世帯の割合は2020年、38.1%と過去最高を記録した。だが、職場での立ち位置に複雑な思いを抱える当事者は少なくない。現代日本に相当数いるのになぜか肩身が狭い、単身者の「いま」を取材した(全6回のうち1回)。

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頼まれる仕事に「またか」

「今度のコンペ、作業量がかなり多そうだから、○○さんにお願いしてもいいかな? 頼むよ〜、○○さんだったら仕事も早いし、そつがないから安心して任せられるんだよね」

 ある日、上司が悪びれもせず、こう切り出した。

「またか……」と重たい気持ちになったのは、都内のコンサルティング企業に勤める女性(41)だ。

上司はうまく取り繕って言ったつもりだろうが、本音は透けて見えている。

「独身の私には仕事を頼みやすいんだと思います」(女性)

仕事熱心なほうだけど…

 自分でも仕事熱心なほうだとは思う。基本的に残業も厭わないし、終電を逃してタクシー帰りになっても、どうということはない。繁忙期とはそういうものだと思っている。20代から仕事中心の生活を送ってきて、忙しいのにも慣れている。

 ただ、30代半ばぐらいから、「私が独身だから、仕事を頼みやすいんだろうな」と感じることが増えた。どこかモヤッとする場面が続くようになった。

 今回は、上司は同じチームのメンバーの名前を挙げて、こう続けた。

「Aさんはコンペの翌月から3カ月育休に入るから実働が難しそうだし、Bさんも子どもが小さいから残業はできないって言うし、かと言ってCさんは案件を6つ抱えていて手いっぱいだし……」

同期の独身男性にも仕事が集中

 Aさんは同じポジションで働く男性だが、2カ月後から育休に入ることが決まっている。コンペが獲れた時の実働には入れないから、「今回のコンペのメンバーには入れないほうがいい」というのが上司の意見だ。Bさんは時短勤務が明けたばかりの女性で、「子どもが小学校に上がるまでは残業は極力控えたい」という意向を上司にも伝えている。Cさんは同期の独身男性だが、常に仕事が集中しており、連日、深夜残業続き。新たなコンペに加わる余裕はなさそうだという。

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