作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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我が盟友、フリーアナウンサーの堀井美香さん初舞台にして初主演作品「フェードラ」を観劇しました。ギリシャ神話を元にした戯曲です。
会場は表参道にある銕仙会能楽研修所。煌びやかなアパレルブランドが立ち並ぶ表参道に能の舞台があることは知っていましたが、中に入ったのは初めて。足を踏み入れた途端、厳かな空気が場を支配していることがわかりました。ここで初めてのストレートプレイをやるなんて、さすがの肝っ玉だよ、堀井美香！
会社員を辞めフリーランスになってから、堀井さんは様々なことに挑戦してきました。「朗読会」なのに2時間近く「読まず」に物語を語ったり、遠方の小さな会場で子どもたちに読み聞かせの会を催したり。一般的なフリーアナウンサーとしての仕事を超え、次から次へとチャレンジする。その姿はキラキラ輝き、まるで背中に羽が生えたよう。
アナウンサーは技術職です。しかし、こと「女子アナ」に関し世間がそう捉えない時代が長くありました。女子アナの望まれるあり方が現代よりずっとステレオタイプだった時代を生きてきた堀井さんが、家父長制に人生を翻弄され、晩年に差し掛かったところで真実の愛、しかも禁断の愛に目覚める姿をどう演じるのか、非常に興味がありました。
