
本号が出る頃には千秋楽を迎えていますが、私が観た堀井さんは文字通り体当たりで役に挑んでいました。あんたすごいよ! よく頑張った!
50歳を過ぎてから、新しいことにプロとして挑戦する。並大抵の努力では届かないことは、堀井さんが一番よくわかっています。だが敢えて、未経験の地へ朗らかに挑んでいく。その姿は眩しいものでした。自分を信用していないとできないことだもの。
堀井さん演じるフェードラが恋に落ちるのは、息子の妻となるペルセア。性別も年齢も立場も超えた二人がなぜ強く結びついたかと言えば、それは封建的な男性社会に生まれたばかりに、女というだけで自己決定権を奪われた者同士だけが築ける絆があったからだと私は解釈しました。シスターフッドのような愛。
舞台には様々な仕掛けがあり、現代社会もギリシャ神話の頃と同じ病を抱えていることが要所、要所で示唆されていました。なにせトランプ大統領の演説の音声から始まるのだから。
じっくり自分で考える時間を与えてくれる舞台でした。
※AERA 2025年7月14日号
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