次女が自分の聴診器を使って長女の心臓の音を聴いているところです。聴診器は次女の名前の刻印入りで、とても気に入って大切に使っているようです(写真/江利川ちひろさん提供)
次女が自分の聴診器を使って長女の心臓の音を聴いているところです。聴診器は次女の名前の刻印入りで、とても気に入って大切に使っているようです(写真/江利川ちひろさん提供)
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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 7月になりました。4月から新生活が始まった我が家の双子の娘たちは、それぞれ大学や生活介護施設に通うことに慣れてきたようです。医療的ケアが必要な長女も、環境の変化で体調を崩すことなく元気に過ごしています。今回は双子の娘たちの近況を書いてみようと思います。

次女は初の病棟実習へ

 看護大学に通う次女は、つい最近、初の病棟実習に行きました。次女が目指しているのは産科領域の助産師ですが、今はまだすべての科をまわり経験を積んでいく時期です。

 初日のオリエンテーションで院内の全科の見学をしたのち、2日目に配属になったのは消化器外科でした。小児病棟の雰囲気しか知らない次女は、実習前日は「高齢者、自信なーい!」と話していましたが、オリエンテーションでまわった緩和ケア病棟に飾ってある絵の意味や、認知症の方に対する看護師さんの接し方や面会に来られるご家族のようすなどを見て、人の尊厳やグリーフケア(死別に対する悲嘆ケア)についてずいぶんと考えさせられたようです。次女はこの実習中に19歳のお誕生日を迎えたこともあり、より一層、響いたように見えました。

  大学が自宅から遠いため、普段は疲れて帰ってくると口数が少ないまま部屋に入ってしまうことも多いのですが、実習中はいつまでもリビングにいて、見てきたばかりのことをずっと話してくれ、最終日には高齢女性とのやり取りが新鮮で成人科も楽しかったと言っていたので、ホッとしました。

 そして翌週の金曜日は、大学内での演習で入浴介助の実践をしたようです。学生同士が看護師役と患者役になり、お互いに洗髪をしたのちに清拭を習ったとのこと。なんと、翌日の土曜日に、次女が長女をお風呂に入れてくれることになりました。私がシャワーチェアに長女を座らせると、次女は長女に話しかけながらとても優しく髪を洗っていました。声かけの仕方も病棟で看護師さんと患者さんのやり取りを見て学んだようです。そして授業の通りに洗髪をすると、私の1000倍くらい丁寧なケアになることを知りました(笑)。

 寝たきりの長女のお風呂のケアは、かなり体力を使います。この日は次女のおかげで午前中に長女の入浴が終わったので、私の気持ちも軽くなりゆっくりと過ごすことができました。19歳、なかなかすごいことを学んでいます。

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