
音楽家の坂本龍一が逝去して、早2年数カ月。坂本の最後のピアノ・ソロ・コンサートを収録したアルバム『Opus』が「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」で最優秀クラシックアルバム賞(Best Classical Album)を受賞するなど、彼の音楽に対する評価はさらに進んでいる。“伊藤ゴロー+パウラ・モレレンバウム+ジャキス・モレレンバウム”による坂本龍一へのトリビュートアルバム『TREE, FORESTS tribute to RYUICHI SAKAMOTO』もその一つだ。
坂本龍一さんとの交流の始まり
ボサノヴァ・デュオ「naomi & goro」の活動で知られる伊藤ゴロー(作曲家、音楽プロデューサー、ギタリスト)と坂本の交流が始まったのは2007年。ブラジル出身のジャキス・モレレンバウム(チェロ)と伊藤を引き合わせたのも坂本だという(坂本とジャキス、パウラのモレレンバウム夫妻はユニット「Morelenbaum2/Sakamoto」として活動していた)。
本作の制作のきっかけは、昨年12月、伊藤、パウラ、ジャキスを中心に東京とソウルで行われた坂本龍一トリビュートライブ。そこで披露された、幅広い時代からセレクトされた坂本龍一の楽曲を中心に、ブラジル音楽の巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲や伊藤ゴロー&パウラ・モレレンバウムの新曲「Fragmentos」を交えて構成されているのが、『TREE, FORESTS tribute to RYUICHI SAKAMOTO』だ。
「教授(坂本龍一のニックネーム)の曲を演奏して、音源として残すのは大変な仕事ですよね。ご本人も自分の音楽に厳しい人だったし、演奏すること自体が難しい曲も多い。アレンジしたところで、教授のファンが受け入れてくれるだろうか?という不安もありますから。一つ言えるのは、教授の音楽に追いつこうとしてもしょうがないし、そんなことはできないということ。そこは割り切って“自分たちが納得できる音楽を作ろう”というエネルギーを大事にするしかないと思っていました。
