撮影/インベカヲリ☆
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 現代日本に生きる女性たちは、いま、何を考え、感じ、何と向き合っているのか――。16歳のころから過食嘔吐と向き合ってきた桃奈さんの半生と、現在地を聞きました(全2回の2回目)。

【写真】女性は「死んでもいいからもっと痩せたかった」と語った

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家を出るために風俗へ

 そんな桃奈さんは、20代前半のころに地方の店舗型風俗店で働いていた時期がある。実家に暮らしていると、過食嘔吐が家族にバレる危険性があるため、早く家を出るために稼ぐ必要があったという。当時は、母親が持たせてくれた昼のお弁当を夜までとっておき、夜になると、夕食とお弁当とコンビニで買ったお菓子をまとめて食べ、お風呂の排水溝に吐くという行為を繰り返していた。その嘔吐物が家の外まで流れてしまい、バレるのも時間の問題だったのだ。

「なぜだか、その風俗店でナンバーワンになってしまったんですよ。小さいころから、かけっこがビリで、数学も0点とかで、できることがほぼなかったのに、こんなところでナンバーワンになってる場合じゃないんじゃないかって落ち込みましたね」

女性をモノのように扱う男性客

 客層は悪く、体を乱暴に触られて出血したり、苦しくてもやめてもらえなかったり、「遊んでお金もらえるなんていいね」と言われたりするなど、女性を一人の人間ではなく、物のように扱う男性客が多かった。それでも、桃奈さんは限界が来るまで頑張ってしまった。桃奈さん自身が死の淵にいるようなギリギリの精神状態で生きていたため、風俗に来る中年男性たちに対しても、「自分が全部受け止めよう」という気持ちが芽生えてしまっていたという。

「当時はボロボロでした。一度、心の中に鉄の壁みたいなものができて、何をされても言われても大丈夫なロボットみたいになった時期があったんです。それでも苦しかった。嫌な客全員の目の前で、一番グロテスクな死に方をして復讐したいと思ったくらい」

悪質な客から性被害

 結局、風俗は2年ほどでやめた。その間、悪質な客から性被害にも遭った。

「『付き合ってくれ攻撃』のすごい人がいて、店に来ては『無理だったら僕は死にます』みたいな圧力をかけられていたんです。最終的には、『友達になろう』って言われたんですが、出会いがそういう店だし、友達になるのも無理があるじゃないですか。だけど、何度も言われるうち、私の頭が固すぎるのかなあと思ってしまったんですよね」

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