反石破急先鋒の“ドン”も活動を活発化

 党内でも不満がたまっている。高市早苗前経済安全保障担当相は「食料品の消費税ゼロ」を主張し、減税に消極的な石破首相の姿勢に反対してきた。改選を迎える西田昌司参院議員は、「石破首相では参院選は戦えない」と強い口調で退陣を迫ったことがある。なお西田氏は昨年の総裁選で高市氏を支持しており、6月25日に配信の動画では、「自民党が目指すべき方向は何なのかが見えなくなっている」と石破体制を批判した。

 注目すべきは、反石破急先鋒の麻生太郎最高顧問の動向だ。麻生最高顧問と岸田文雄前首相、そして茂木敏充前幹事長は3月と5月に会食した。さらに麻生最高顧問は6月16日に茂木氏、18日に岸田氏と立て続けに会食するなど活動を活発化している。26日夜には世耕弘成前自民党参院幹事長(衆院議員)らとも都内で会食し、情報交換を行った。

 食事会は首相の座を狙って衆議院にくら替えした世耕氏の呼びかけで開かれたもので、山本順三元国家公安委員長や末松信介元文部科学相といった清風会(参議院の旧安倍派)のかつてのメンバーも参加した。前日の25日に正式に解散した清和政策研究会(旧安倍派)の再結集をもうかがわせる動きといえる。

 公式の場での発言で、先手を打とうという動きもある。岸田氏は6月25日にさいたま市で行った講演で、参院選後には「政権交代も起こり得る」との認識を示した。また「連立も考え直さなければならないのではないか」と、野党との連携の必要性にも言及した。

 岸田氏は昨年の総裁選に出馬せず、石破首相を支持して2回目の投票での勝利に導いた。その温存した力で、虎視眈々と石破首相の後釜を狙っていると言われている。石破首相にとっての前門の虎は次期参院選だが、後門の狼はポスト石破を狙う面々であるにちがいない。

(政治ジャーナリスト・安積明子)

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