2011年の東日本大震災以降、東京中心主義のライフスタイルを見直し、あえて限界集落や孤島へ移り住もうとするローカル志向の人々が増えています。2000年以降に流行した"スローライフ"や"エコ""ロハス"ブームとは一線を画し、従来の価値観に縛られずに、地方に新たな活路を見出す若者の存在がにわかに脚光を浴びているようです。



 雑誌『ソトコト』編集長の視点から、地方移住ムーブメントの定点観測を続けてきた指出一正(さしで・かずまさ)さんは、近著『ぼくらは地方で幸せを見つける ソトコト流ローカル再生論』の中で以下のように述べています。



 「みなさんは、まったく知らない土地で暮らすというと、どんなイメージを持たれますか?まわりは知らない人ばかり。いちから人間関係をつくっていかねばなりません。最初は友人がひとりもいなくて寂しい思いをするかもしれません。仕事の心配もあります。僕自身、若かったら飛び込めたかもしれませんが、40代のいまはいろいろと考えて躊躇してしまいます」(同書より)



 指出さん同様、田舎暮らしに憧れる気持ちはあっても、いざ引っ越すとなると、移住先での仕事や人間関係、住居探しなどの現実的な面が足枷となり、踏ん切りがつかない人が大半なのではないでしょうか。



 同書で紹介するのは、そんな移住にまつわる障壁をものともせず、やすやすとハードルを飛び越えてしまった若者たちです。



 指出さんは彼らを「ローカルヒーロー」(同書より)と呼び、次世代のまちづくりの担い手と位置付けています。そして彼らは、"地域を盛り上げるために大掛かりなムーブメントを起こそうとしているわけでも、ストイックに社会活動に奮闘しているわけでもなく、純粋にその土地にワクワク感や居心地の良さを感じて移住し、ごく自然体に地元の人たちと一緒に地域づくりに取り組んでいる"と言います。



 たとえば、宮城県気仙沼市の唐桑(からくわ)半島に移住した「ペンターン女子」のリーダー、根岸えまさん。ペンターンとは、半島を意味する「peninsula」と、移住を意味する「turn」を組み合わせた造語です。東日本大震災をきっかけに、縁もゆかりもない半島に移住した20代のペンターン女子たちは、"仕事・人間関係・家"という田舎の「三大ネガティブ要素」を覆して地域コミュニティに溶け込み、充実した日々を送っているのだとか。



 同書では、そんな「ペンターン女子」根岸さんをはじめ、自給自足の暮らしを実現させる『いとしまシェアハウス』(福岡県糸島市)を立ち上げた畠山千春さんなど、地方で幸せを見つけた若きローカルヒーローたちをご紹介。東京暮らしでは決して味わえない生きる手応えが、彼らを魅了してやまないのかもしれません。



 ちなみに本書刊行記念イベントとして、下北沢の本屋B&Bでは1月11日(水)、著者である指出さんがゲストと登壇する「東京で地域について語ろう。地域×編集長ナイトJanuary」が開催されます。いったいどんな話が飛び出すのか、こちらも気になります。