――理事長就任時、「(日大の)マッチョな体質を変えたい」と意気込んでいましたが、女性がトップに立ったからこその変化はありますか。
今、理事会の3割以上が女性で、業務執行理事の一人や副学長の一人も女性です。女性はコンプライアンスに関して潔癖な傾向があるので、何か問題を起こした人がいれば、責任を取るべきだという声がきちんとあがる。組織として健全な方向に変わってきたと思います。
また、トイレの洋式便器化やパウダールームの整備、生理用品の設置など、「トイレ革命」も進めています。現在の日大の女子学生比率は約3割。女子学生を増やすための対応は急務なので、経営にも女性ならではの発想が必要です。
近年、学長など学術・教育分野のトップを務める女性は増えていますが、経営のトップである理事長となると非常に少ない。教育というのはお金も時間もかかることで、経営にはダイナミックな視点が求められますが、非常にやりがいがありますよ。もっと女性の理事長が増えればいいのにと思います。
――日大の存在意義とはなんでしょうか。
いつもすごいなと思うのですが、誰かと会って日大の話をすると、「父が卒業生です」「兄が日大でした」などと何かしら接点がある人が多いんです。卒業生の数は累計128万人で、全国における社長の出身大学ランキングでは14年連続1位。“数”という点では、日大こそが日本の発展を支えてきたという自負があります。
一方で、ネットの世界を中心に、アンチの人々も一定数います。何か不祥事が起きるとすぐに大きく報道されます。それが他校とは違いますね。先日の重量挙部前監督の逮捕も私どもが調査し、一年前に発表したものですが、逮捕によって「またか」とさんざん叩かれました。実際の日大は、学生の満足度も高いし、職員も一生懸命頑張っている。そういう姿を世に広く伝えることが私の役割だと思っています。
日大の学生はみんな可愛い
――ちなみに、作家業を再開する予定はないのでしょうか。
「小説のネタ作りのために理事長を引き受けたんだろう」なんて言われるのは嫌なので、当分本は書かないと思います(笑)。でも、作家としての経験は大学経営にも生きているんですよ。作家は受注産業なので、編集者と関係を築いたり協力を求めたり連係プレーも必要で、組織を動かす上で通じるものがあります。
理事長になってから、ヒヤヒヤする日々の連続です。建築資材が高騰する中、医学部附属病院の建て替えのことを考えると夜も眠れないし、何か事故のニュースがあれば、うちの子たちが巻き込まれていないかと心配でたまらない。まあ、年齢的に子どもというより孫ですけどね(笑)。やっぱり日大の学生だとみんな可愛くて、楽しい学生生活を送って、思うような仕事に就いてほしいと、そればっかり考えています。
(聞き手・構成/AERA編集部 大谷百合絵)
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