
――7月で理事長就任から3年が経ちます。当初と比べると物事がスムーズに進むようになったのでは。
よく勘違いされるのですが、理事長の鶴の一声でこれだけ大きな組織を動かすなんてありえません。何か企画を提案すると、「予算はどこから持ってくるのか?」「どこの部署が担当するのか?」と必ず指摘が入ります。大きなことはまず委員会を立ち上げ討議します。
私は理事長就任時、文化事業として室内楽の殿堂「日本大学カザルスホール」を再開させることを宣言しました。しかし、日大の一連の不祥事を受けて、私学助成金の全額不交付が続く中、「ホール再開に多額の費用を投資してよいのか」「もっと別の活用の仕方があるのではないか」という見方もあり、改修工事は休止しています。
先日、1万4千人を超える学生たちが、学部の垣根を越えてグループワークを行う「日本大学ワールド・カフェ」を行った際、参加者に喜んでもらおうとミレービスケットを配ったのですが、この出費に対しても賛否が分かれました。ビスケットひとつでも、理事長の思い通りになんてならない。大学経営はまずは協議から始まります。
学内でドーナツを配る
――林理事長が就任してから、日大はどう変わりましたか。
内部監査の強化など30回以上の会議を重ね、ガバナンス再構築のための「改善改革」を徹底的に進めてきました。改革の進捗は大学ホームページでも都度公開していますが、一般の人にはなかなか届きませんね。
不祥事の事後処理がひと段落ついて、ようやく学生向けの企画に注力できるようになってきました。昨年度からは、学内でドーナツを配る「スマイルキャンパスプロジェクト」を行っています。私もエプロンをつけて出向いて、学生に「私のこと知ってる?」と話しかけてみたら、「名前も聞いたことない」と……。周りの学生から、「この子は留学生だから」と慰められました(笑)。あとは2040年の日大を考える大きなプロジェクトが進んでいます。