撮影/写真映像部・山本二葉
撮影/写真映像部・山本二葉

――蘭々さんも歌唱力に定評がありますが……。

 と、言われたりもしますけど全然ですね。自分で言うのもなんですけど、自分像への評価は結構リアリストなところがあります(笑)。良い意味で打ちのめされて良かったですよ。そういう体験ってなかなかできないじゃないですか。13歳の時から芸能の仕事をしてきて、全否定する人がいない環境で、あのまま留学せずにすごく狭い世界で過ごしていたら今はどうなっていたんだろうと思います。広い世界で豊かな才能を見て、自分の小ささを知ったのは良い経験になりました。

「みんなおめでとー!」

――帰国後は舞台女優として活躍されますが、仕事に向き合う姿勢で変化はありましたか?

 20代前半で子供の頃からの夢を全部叶えてしまい、次のなにか、を探しにニューヨークに行ったのですが、帰国後は芸能人としてのビジョンというより人としてどう生きたら良いのかという価値観に自然とシフトして行ったような気がします。米国ではベトナム戦争から戻ってきた兵隊の方が足を失って車いすに乗って物乞いをしていたり、日本では遭遇しない方たちに出会いました。人としての生き方を見つめ直した時、尊敬や憧れる対象も変わりました。華やかな舞台に立つキラキラした人より、舞台の裏で小道具を直したり、演者さんを支えたりする裏方さんに目がいくようになって。遅かったかもしれませんが、演者さんを支える方たちに尊敬の念を持つようになりました。

――2018年から歌手活動を再開し、今年7月に都内で50歳記念バースデーライブを開催します。

 本当にありがたいです。私たちの仕事はファンの方たちがいらっしゃるから成り立つので、感謝の思いしかありません。正直、芸能の第一線でずっとやってきた感がなくて。「あの人どこにいったカテゴリー」に入る私ですけど(笑)、今もライブに足を運んでいただけたり、番組出演後に出待ちをしてくださったりする方々がいる。わざわざ足を運んでいただけるのは当り前じゃないですし、昔の財産で生かされていることが多いと感じます。芸能界って厳しい世界じゃないですか。先が見えない世界ですけど、ファンや自分を支えてくれる方たちを失望させたくないし、嫌な思いをさせたくない。バースデーライブは「お互い頑張ったよね、えらいよ。みんなおめでとー!」って皆さんに伝えて楽しい時間を過ごしたいですね。

(聞き手・構成/平尾類)

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