――指摘されることで気づきを得るということも大事ですね。
まあでも、僕の知らないところでそっと直してくれているのかもしれへんし、自分で意識して気づくというのも大事かもしれないです。
僕は当初、洗濯物の畳み方も「これでいいかー」とぐちゃぐちゃで、取り込んだままどさっとかたまりで置いてあるよりはいいか、くらいの気持ちでしたから。でも、いざ服を取り出してみると「あれ、ちょっと形が違うよなあ」「こんな四角かったっけ」と気づいたんです。「おや?」と思ったら聞くようにしてますね。今では畳み方を習ったことで完璧ですよ、たぶん(笑)。
――2022年にお子さんが生まれました。家族が増えてからの家事についての変化はありましたか。
子どもが生まれてからは、暗黙の了解で進めるのではなく、より密に話すようになりました。仕事柄、時間が不規則ですし、そこに新たな家族が加わって、自分のペースだけで家事を進めることはできないので。今もそうですが、仕事のスケジュールに端的に「南明奈お仕事のためNG」と入れるようにしています。家事育児の時間をしっかり確保したくて。
――分担も変わりましたか。
妻が仕事で不在のときは、わかりやすいものであれば幼児用のご飯を作ることもあります。基本的に料理は担当させてもらえないので(笑)、パックを温めるとか、本当に簡単なものを。それすらも間違えてえらいことになったこともあって、電子レンジで20秒温めるものを勘違いして20分も温めて、焦げ焦げにしちゃったこともあります。

――育児は「得意なほうが受け持つ」というものではないので、必然的にチャレンジも増えます。
苦手だからとかで済む話ではないですからね。なので、妻が「冷蔵庫にこれが入ってる」「何秒温める」「ヨーグルトにはイチゴを入れる」「夜泣きの漢方も入れて混ぜる」など、手順を細かく紙に書いて、各食材に貼り付けてくれました。妻は相当不安だったんだと思います。
リスペクトを持つことが何より大事
――家事の基本的な主導権は明奈さんに握ってもらっていたほうがいいのでしょうか。
主導権というよりは、常に相談できる、助言をもらえる師匠みたいな感じでしょうかね。家事についてはこの距離感が僕には心地いいかなあと思っています。僕が主導権を持ってうまく回ったことはないけど、家事は自主的にやりたいので、「今からこれをやろうと思うけどどうすればいい?」とその都度聞くようにするスタイルに変わっていきました。失敗して、助言を受けてという学びを繰り返していると自分が上達していくのがわかるので、相手への思いやりを持ってとにかく聞くこと。そうすれば家事が楽しくなるかもしれないです。
それが成り立つのも、妻が僕の性格や、得意不得意を理解してくれているから。互いに理解しあって、リスペクトを持つことが何より大事なんだと思います。
――不満が先立つと敬意を忘れがちになって、ぶつかってしまうという話もよく聞きます。
家事は自分でやって当たり前、やってもらったら感謝する。この姿勢で「ありがとう」は多く言うようにしています。お互いにお礼してほしくて家事をやっているわけではないけど、感謝があれば「喜んでもらえた」という気持ちよさもあります。
――お子さんに対しても家事を積極的にという意識を持って接していらっしゃいますか。
3歳になりますが、すでに片鱗がありますね。僕が開けっ放しにしたドアを閉めたり、電気の消し忘れをわーわー騒いで教えてくれたり。僕が掃除機をかけていると、簡易ワイパーを持ってついてきて、吸えてない髪の毛が1本あるぞって教えてくれます。家事に対する抵抗感がなく育ってくれるといいなと思います。親の姿を見て育つと思えば、僕はより自主的にやらねばと背筋が伸びますね(笑)。
(AERA編集部・秦 正理)
