参院選は全体の定数(248)の半数が改選。内訳は選挙区が複数区13、1人区32、比例区50だ。自民、公明の与党は非改選が75議席もあるので、今回の改選で50議席を獲得すれば、石破首相が目標として掲げる「全体の過半数125議席」が確保できる。公明は選挙区と比例区を合わせて12議席程度とみられるので、自民党は38議席を取れば過半数に達する。全ての複数区で議席を確保すれば13議席、比例区で前回(22年)の18議席を下回る13議席を取れば、計26議席。1人区のうち12選挙区で勝てばよい計算だ。自民党のハードルは低い。

根が深い有権者の不信

 それでも自民党の苦戦が予想されている。裏金問題と物価高、人材不足をめぐって、有権者の不信の根は深いのだ。

 自公で50議席を割り込めば、参院で半数を下回るため石破首相は退陣する。自民党は後継を選ぶ総裁選に入る。後継総裁の下で新たな連立相手を探すのか、それとも野党側が非自民で多数派を作るのか。攻防は激化するだろう。一気に非自民の連立政権が誕生する可能性もある。

 自公が60議席を上回れば、参院の安定多数は維持できるから、石破政権は存続する。政権運営を安定させるために、国民民主、維新、立憲とどのような政策で合意形成するかが焦点となる。自公の獲得議席が51~60議席の場合はどうか。参院ではギリギリ過半数を確保できるが、衆院では少数与党だ。不安定な政権運営が続く。事態打開のために森山幹事長が国民民主や維新に政権入りを要請。受け入れれば、連立が補充・拡大され、政権は安定する。

 一方で立憲との大連立にかじを切るかもしれない。公明も加わり、衆院で8割を占める巨大与党となる。「大政翼賛会になる」という懸念がある半面、財政や社会保障などの懸案を一気に処理できるという期待は官界や財界の一部に出ている。

 7月20日の投開票の参院選は、石破政権の命運だけでなく日本政治の行方を左右する天下分け目の政治決戦となる。

(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2025年6月30日号

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