
7月20日、参院選の投開票を迎える。自民党が惨敗すれば石破茂首相は退陣必至となる。裏金問題、物価高などをめぐって、有権者の自民党への不信は根深いが、果たして……。AERA 2025年6月30日号より。
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1月から続いた通常国会の閉幕で、誰よりも安堵しているのは石破茂首相だろう。少数与党という悲哀を嫌というほど味わったからだ。しかし、休む暇もなく参院選に向けた攻防が始まる。自民党が惨敗すれば首相退陣は必至。与党で過半数を維持しても、衆院での少数は変わらない。自民、公明の連立に新たな勢力を「補充」して難局をしのぐのか、立憲民主党を含む大連立で政局の転換をめざすのか。石破首相の暑い夏が続く。
2024年10月の総選挙で少数与党に転落した石破政権はまず、補正予算を成立させなければならなかった。総選挙で「年収103万円の壁解消」を掲げて躍進した国民民主党との協議を進めた。控除額を「103万円から178万円への引き上げをめざす」ことで合意。国民民主の賛成で補正予算成立にこぎつけた。
1月からの通常国会では当初予算案の行方が焦点だった。衆院で野党の「反対多数」で否決されたら、その時点で石破政権は崩壊する。政府・与党内の危機感が募る中で、自民党の森山裕幹事長は日本維新の会の前原誠司共同代表と接触。維新の看板政策である高校授業料無償化のための予算措置をすることで合意した。自公と維新の賛成で予算案は修正されて成立。石破政権は危機を乗り越えた。
「その場しのぎ」の連続
5月には年金問題がハードルとなった。国民年金や厚生年金の給付額などを見直す改定で政府・与党がまとめた原案では、就職氷河期世代の年金受給額が減少する分を補う対策が講じられなかった。政府内ではサラリーマンらが加入する厚生年金から流用する案が検討されたが、自民党から「参院選を控えて有権者の反発を受ける」との意見が強まり、見送られた。立憲の野田佳彦代表は「あんこのないアンパン」と批判した。
このままでは衆院で年金法改正案が通らず、政権へのダメージは計り知れない。その危機を救ったのは、自民党の田村憲久氏と立憲の長妻昭氏という厚生労働相経験者だった。二人は協議を重ね、就職氷河期世代の年金上乗せを図る内容の修正案をまとめた。その結果、自公と立憲の賛成で年金法改正案は衆院を通過。参院でも可決、成立した。補正予算は国民民主、当初予算は維新、年金は立憲。それぞれ個別に協議して危機をしのいだ。政局安定とは程遠い「その場しのぎ」の連続だった。