鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
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 受験に失敗したことを問い続ける母親に嫌気がさしている21歳女性。「満足している」と答えるのに、それでも帰省すると執拗に聞いてくる母親に、うんざりしているという。そんな女性に鴻上尚史が伝えた、母親と戦う「攻略法」とは。

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【相談258】

執拗に「なぜ試験に落ちた」と問い続ける母にうんざりしています(21歳 女性 しいな)

 私は今年で22歳になりますが、大学2年生です。高校卒業後、医学部医学科を目指して2年間の浪人生活を送りましたが合格は叶わず、医師ではない医療職を目指す学部学科に昨年度入学しました。幸い、友人や先生方に恵まれ、2年越しのキャンパスライフが楽しくて仕方なく、今の大学に入学したことに全く後悔はありません。

 医学部医学科に合格できなかったことに悔しさ、悲しさはありますが、自分では既に「過去のこと」として割り切っており、仮面浪人をしたり再受験をしたりするつもりは全くありません。むしろ、あの2年間のようなつらい経験はもうしたくないという思いが強いです。しかし、医学部医学科は再受験する人が多く、あんな経験をもう一度してでも目指したい、という気持ちが芽生えればそのときに真剣に考えようと思っています。ただ、このことに母が納得していないように感じています。私が帰省するたびに、「どうして医学部に合格できなかったと思う?」「今の大学は本当に楽しいの?」と言い始めます。正直、うんざりしています。私は気持ちを切り替えて、次のステップに進もうとしているのに、母は私の不合格をいつまでも引きずっていて、私としてはいい加減にしてくれという思いです。

 昔から私と母は「合わない」ように感じていて、様々な価値観や考え方がとことん合わない親子として生きてきました。おそらく母としては、私の小さいころからの夢が叶わなかったことがショックなのだと思いますし、母の学生時代の話を聞く限り、この人は挫折の少ない学生生活を送ってきたのだな、と感じます(私が知らないだけかもしれませんが)。

 父は「やりたいことを見つけて、それに向かって全力で頑張ってくれたら文句は言わない」というスタンスでいてくれるので、もう過去のことについてはほとんど触れてきませんが、気を遣って触れないようにしている感じもありません。私は今の大学生活が本当に楽しく、この気持ちは嘘ではありません。それなのに、母は私の気持ちを全く信じてくれず、ずっと過去にこだわっています。そして、いつかまた私が医学部医学科を目指し直すことが母の中では決定事項のようです。

 親にとって、子供の夢が叶わなかったということが相当つらいことなのだろうというのは、私も少しは想像できます。私の本心からの言葉を信じない母に、私はこれからどう接していけばよいのでしょうか?かなり長文になってしまい、本当に申し訳ありません。

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