
株式会社デジリハ代表取締役/CEO・NPO法人Ubdobe代表理事、岡勇樹。障がいのある子どものリハビリでは、痛みで泣いてしまう子もいる。それでもリハビリをさせる必要がある。楽しくリハビリできたらいいのに。重度の障がいのある子を持つ親の願いから、「デジリハ」は生まれた。リハビリだけでなく、親が死んだあとも子どもを支えるツールにしたい。持ち前の行動力で突き進む。
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東京・江戸川区にある児童発達支援・放課後等デイサービスの施設「ここね」。部屋に入るとリハビリが行われていた。
通常、リハビリというと理学療法士などと一緒に手足を動かしたり、歩く訓練をしたりする姿を想像するが、ここでは違った。クジラや太陽、鳥、火山、気球、そしてクルマなどの画像が壁に映し出され、その画像を前に子どもたちが楽しそうに触ったりしている。クジラにタッチすると泳ぎだし、太陽に触ると陽炎が回転する、火山に触れると噴火し、クルマにタッチすると走り出す……。デジタルアートをリハビリに応用したツール「デジリハ」の「そらの水族館」というアプリだ。
重い障がいのある子どもたちだが、「触る」→「動く」という反応が面白く、もっと触りたいと思って立ったり、腕を曲げたり伸ばしたりする。それがリハビリの一助になるのだという。リハビリの様子をそばで見つめていた、デジリハ代表取締役・岡勇樹(おかゆうき・44)が言う。
「つらいけど、つい動かしたくなるのがデジリハの一番の特徴です」

デジリハをリリース当初から利用する「ここね」の理学療法士・宮代(みやしろ)祐希(33)もこう話す。
「通常、一人で長い時間立っていられない子がデジリハを使えばできたり、普段のリハビリでは難しい伝い歩きをすることがあります。デジリハは楽しいから心が動く。心が動くと体が勝手に動く。そこがデジリハのすごいところですね」
「ここね」に通う野村颯真(そうま)(7)は首や腰が据わらないので座位姿勢が保てず、また話さないので意思表示が難しいが、デジリハをすると体を動かしたり笑ったり感情表現が豊かになる。母親は「デジリハが刺激になり感情の引き出しが増えて自分の意思を伝えられるようになれば」と話す。
10代で受けたイジメ 音楽が世界を広げた
デジリハは、それぞれの子どもの身長や障がいの程度、できることのレベルなどに合わせて、クジラやクルマなどの位置を調整したりルールを変えたりすることができる。また寝たままでもセンサーを使えばできるし、視線入力でも操作可能だ。