暮らしにくさを補うのは?

――日本社会を見渡すと、いわゆるロスジェネ世代、就職氷河期世代を中心に、非正規で働いたり、苦しい生活を強いられたりしている人が大勢います。

 私は岸田政権時代に官房副長官を務めてきましたが、岸田政権が一番力を入れたのが人への投資、リスキリングです。技術を身に付けていただいて、それによって少しでも賃金を上げていくことが基本でしょう。

 岸田政権で人への投資に力を入れて、賃金は上がってきています。そして、一定の流動性が生まれている。もちろん無理に流動させる必要はありませんが、転職が少し進むようになり、賃金が上がるという意味ではこの2年で明らかに成果が出ていますし、労働生産性も上がってきているので、手応えは感じています。

――少子化問題、人口減少社会についてはどう捉えていますか。2024年の出生数は約68万6千人と衝撃的な数字でした。

 私自身は年間200万人弱が生まれていた世代ですから、60万人台というのは衝撃的です。我々も子育て支援予算の倍増などいろいろなことに取り組んできましたけれど、もう一度、お子様を持つことの価値や楽しみを社会全体で考える時期に来ているかなという気はします。

 ただ、人口減は偏在の問題とも関連してきます。東京にだけ人口が集中していることをどう考えるか。人口が減っているのは事実ですが、国の存続にかかわる事態になっているかというと、僕はまだそうではないと思う。

まずは東京一極を是正しながら、地元でも生涯を暮らせるような仕組みにしていくことが重要です。生まれた地で暮らすことに喜びや誇りを感じることは多いので、暮らしにくさは移住といったことではなく、技術で補っていく。自動運転やドローン宅配、リモート手術などが発展していけば、地方でもより暮らしやすくなるはずです。

(聞き手・構成/AERA編集部・川口穣)

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