
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
『出獄記』は著者である山本譲司さんが自らの服役体験から「更生」よりも「処罰」に傾く日本の刑務所のあり方に疑問を持ち、二十数年にわたって見つめ続けてきた刑務所の現場について、ノンフィクションとフィクションを交えて描き出した作品。死刑囚、刑務官、外国人受刑者、家族、福祉関係者などさまざまな視点から書かれた本書は、日本社会が見つめるべき現実と希望を提示している。山本さんに同書にかける思いを聞いた。
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2000年に秘書給与詐取事件を起こして服役した元衆議院議員・山本譲司さん(62)。発覚から裁判、収監までは大きな騒ぎになったが、その体験を生かして書いた『獄窓記』は別の意味で読者に衝撃を与えた。山本さんの「仕事」は障害を持つ受刑者たちの介助役。彼らの多くは本来受けるべき福祉からこぼれ落ちてしまい、罪を犯した人々だった。この作品は注目を集め、新潮ドキュメント賞も受賞した。
「あれは内省のつもりで書いた文章です。刑務所で実感した福祉の問題について、0というかマイナス100くらいから勉強し直そうと思って」
その後は障害者福祉施設で働きながら、PFI刑務所「播磨社会復帰促進センター」や「島根あさひ社会復帰促進センター」の計画立案・運営や、厚生労働省「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究」の研究者を務めるなど幅広く活躍してきた。