元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】銭湯仲間のおばさまからいただいたカワイイうちわ

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 前にも書いたが私、今年60歳になりまして。

 60と言えば還暦。人生を一周して、あとは余生? いずれにせよ60の大台に乗ると、ちょっと老人感ありますよね。とはいえ、高齢化が進む世の中では60なんて「ややフケたヒヨッコ」程度。老人感はなかなか持ちづらい……と思っていたんだが。

 来ましたよ意外なところから。私はガス契約をせず銭湯生活をしているんだが、我が区内の銭湯では60を超えると月4回の割引が受けられるのだ。おお私もついに老人福祉の対象になったかと、可笑しいやら感慨深いやら。

 とはいえ私、幸いまだ元気だし、フリーだからフツーに仕事してるし、まさしくまだまだヒヨッコでして、そんな私が制度のお世話になって良いものだろうか……と銭湯の女将に相談すると、いやいや使えるものは使ってください、ずっと税金を払ってきたんだから遠慮なんかしなくていいんですと言われ、そうかそうだよねと身分証明書など提示し割引券ゲット。そこまでは良かったんですが。

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