「iDeCoのルール変更はもう少し丁寧な説明が必要だった」(撮影・東川哲也/朝日新聞出版写真映像部)
「iDeCoのルール変更はもう少し丁寧な説明が必要だった」(撮影・東川哲也/朝日新聞出版写真映像部)

「iDeCoは掛け金の全額所得控除が認められ、運用中のスイッチング(運用商品変更)は非課税、受取時には公的年金控除や退職所得控除が適用されます。

運用中の税負担が軽減されているわけです。

そのうえで受取時も全額非課税というのは、やはり慎重な検討が必要になります」

 そう、退職所得控除。iDeCoの改正では、いわゆる「5年ルール」が「10年ルール」に変更となった。

 これまではiDeCoの一時金を受け取り、5年後に退職金を受け取れば、両方で退職所得控除が受けられたが、その経過期間が10年になってしまうのだ。

 要は退職所得控除を本来の退職金にもiDeCoにも(2回フルで)使う手が封じられたわけで、「老後設計が狂う」と大批判を浴びた。

「退職所得控除を利用するすべての方の公平性の点から変更されたと理解しています。

2回使えなくなった方が不満に思う気持ちはわかります。

ルールを変更するなら、もう少し早めに周知しつつ、意見を問う工程があってもよかった。そのうえで、もっと丁寧な説明が必要だったと思います」

「丁寧な説明」があっても、SNSなどでの批判はやまなかったとは思うが。

SNS上の声には

 SNSといえば、Xなどでの政治家への批判も年々ひどくなっている。岸田さんの首相時代もキツい投稿を何度も目にした。

「ネットにおいても現実社会においても、自由闊達な議論や発言ができることは日本のいいところだと思います。一方で、行きすぎた批判、心ない意見は許されません」

「本当は傷ついていた」などの人間らしい(?)言葉が聞きたかったが、岸田さんは本音を言わなかった。

 ただ「受け取った人がどのように感じるか、という人の気持ちに思いを馳せる社会にしていくことが大事」と付け加えた声は低く穏やかだった。

 ここで岸田さん自身について少し振り返る。東京・渋谷区に生まれ、選挙区は広島市中心部の衆議院広島1区だ。祖父の代から3代にわたる支持基盤を持ち、当選11回。

「政治家志望ではなく、子どもの頃は小説家や画家、スポーツ選手になりたかった」

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