
アレルギーというと、花粉症のような鼻水やくしゃみ、目のかゆみ、発疹などを思い浮かべがちですが、実際には腹痛や下痢、吐き気、咳、息苦しさといった消化器や呼吸器の症状も出ることがあります。
過去に「オボムコイド」で陽性と出ていたにもかかわらず、ここ半年ほどは毎日卵を食べる生活を送っていました。朝食のスクランブルエッグや運動後のゆで卵など、1日1〜2個は確実に食べていたと思います。すると、以前と同様のかゆみや腹部症状が再発したのです。
成人してからアレルギーを発症するというと意外に思われるかもしれませんが、実はそれほど珍しいことではありません。米国の研究によると、成人の約10.8%が何らかの食物アレルギーを持ち、そのうちおよそ半数が成人期に初めて発症したと報告されています(Gupta RS, et al. JAMA Netw Open. 2019;2(1):e185630)。
成人してから発症の背景は?
その背景にはさまざまな要因があると考えられています。加齢に伴う免疫系の変化や、抗生物質の使用、生活習慣の変化による腸内環境の乱れなどが、アレルゲンに対する防御機能を弱めてしまうことがあるといわれています。
2021年に発表された論文(Keet CA, et al. Curr Opin Immunol. 2021;72:136–142)では、大人になってから食物アレルギーを発症する理由として、いくつかの仕組みが考えられると紹介されています。たとえば、皮膚や腸の粘膜からアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に繰り返し触れることで、体がそれを「異物」として認識し始めることがあります。また、抗生物質の使用やストレス、生活習慣の変化によって腸内環境(腸内フローラ)が乱れると、免疫のバランスも崩れやすくなり、アレルギーを起こしやすくなるともいわれています。さらに、もともと別のアレルギーがあった人が、似たような構造の食品に反応してしまう「交差反応」も、その原因のひとつとされています。
子どもの頃にアレルギーがあった場合でも、大人になるにつれて症状が出なくなることがあります。しかし、そうした体質が完全に治ったわけではなく、大人になってから再びアレルギー症状が出てくることがあります。さらに、長い間食べていなかった食品を久しぶりに食べたときに、体がその食べ物を“異物”とみなして反応してしまい、症状が現れるケースもあるのです。