電車内での「前リュック」にはアンチも多い
この記事の写真をすべて見る

 6月10日、気象庁は関東甲信と北陸地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表した。傘を持ち歩く機会も増え、満員電車など混雑する場所での荷物の扱いやマナーも気になる。過去、話題となった「前リュック」についての記事を再掲する(この記事は「AERA dot.」に2024年4月24日に掲載された記事を再編集したものです。本文中の年齢、肩書等は配信当時)。

【写真】外国人観光客のマナー違反に怒るスナックのママはこちら

*   *   *

 電車内でこんなアナウンスを耳にしたことがある人は多いだろう。「リュックサックなど大きなかばんをお持ちのお客さまは、手にさげてお持ちになるか、座席上の荷物置きをご利用ください」。学生のみならずビジネスシーンでもリュック利用者が多くなり、電車では「リュックは前に抱える」のがマナーとして定着しているかと思いきや、そのような案内はない。不思議に思い、鉄道会社に話を聞くと“前リュック”にNOを突きつける利用者が一定数いるのだという。SNSでも論争が巻き起こる、「電車内での正しいリュックの持ち方」を考えてみた。

 混雑した電車内でリュックを背負ったままでいると、背後の通路をふさぎ、他の利用者にぶつかるなどしても気づきにくいため、一般的には前に抱えることがマナーとされている。記者は通勤の電車で、周囲のリュックユーザーの様子を観察してみたが、大半の人は乗車時にリュックを背側から腹側に回していた。だが、前述のように鉄道会社はリュックを「前に抱えてください」とはアナウンスしていない。もしや、最新の常識では、“前リュック”はNGなのか?

 そこで、冒頭のアナウンスを流していた東京メトロに放送内容の意図を聞くと、「お客さまのそれぞれのお手荷物の持ち方を否定するものではなく、混雑する車内を快適に、また、一人でも多くの方にご利用いただくための放送であることをご理解いただければと思います」と返ってきた。

満員電車ではリュックをどう持つべきかSNSで「議論」になっている。写真はイメージ(GettyImages)

アンチ「前リュック」派の言い分

“前リュック”をマナー違反とは考えていないそうだが、それではなぜ、「手にさげて持つ」と「荷物置きを利用する」という2つだけを案内しているのか。

 実は2023年度に同社に寄せられた、65件もの「車内でのリュックのマナーに関するご意見・ご要望」のうち、「前に抱えるのではなく手に持つように周知してほしい」という意見があったのだという。

 前に抱えることで、一体どのような問題が起きるのか。Xをのぞくと、数々の“アンチ・前リュック”コメントが散見された。

「電車内でリュック前背負いしても面積変わらないからおろして足元に置くか棚に置いてほしい」

「前にするの関東圏にきてよくみるのよね。前に抱えて肘張ってスマホだから、邪魔」

「リュックを前に抱えて電車に乗る人、背後には気遣うくせに目の前の人間にはぶつかり倒すのなんで…」

 なかには、“前リュック”をしたくてもできない深刻な事情を抱える人もいるようだ。

「(妊娠によって)お腹がますます突き出てきて、通勤電車でリュックを前に抱えるのが苦しくなってきた」

「私は心臓が圧迫されるのがヤバい病気なので、リュックを前に背負うことができない」

「私は満員電車でもリュックは背負ったままが多いです。理由は痴漢対策。前は自分で見えるし手で防ぐこともできますが、何も背負っていない背中は正直無防備な状態です。痴漢の多い車内で自分を守るために背負っています。少しは理解して頂きたいです」

次のページ 鉄道会社に寄せられた「要望」