
恵まれた体ではないパワーヒッター
ヤクルトや侍ジャパンを取材する記者たちが山田を見た際に、口をそろえて言っていた印象的な言葉がある。
「もっと大きい選手と思ったんですけど、意外に小さいんですよね」
山田は身長181センチ、81キロ。小柄ではないが、数年前までもう少し細身で、体重は70キロ台だった。筒香嘉智(DeNA)、大谷翔平(ドジャース)、鈴木誠也(カブス)といった当時の侍ジャパンのパワーヒッターたちと並ぶと一回り小さく見えていた。それでも、本塁打を量産し、だれも達成していない複数回のトリプルスリーを成し遂げている。その秘訣はなんだろうか。当時対戦した他球団の打撃コーチはこう分析する。
「ボールにバックスピンをかけて球を飛ばす技術がすごい。あれは教えて習得できるものではありません。大谷と違って、山田のフリー打撃はフェンスを越える打球が少ないんです。でも試合になると本塁打を量産できる。これは、相手の球の速さを利用して反発力で飛ばしているからです。盗塁も足が速いだけでなく、スタートを切るタイミングが抜群にうまい。大谷はもちろんすごいですが、山田も天才ですよ」
19年6月に通算1000安打を達成。この時に26歳だったことを考えると、2000安打達成は通過点に思えたが、この年から打率が3割に到達しなくなった。20年は打率.254、12本塁打で盗塁数は前年の33から8へと激減。21年は打率.272、34本塁打、4盗塁。本塁打数もこの年が最後の30本塁打超えになっている。昨年は打率.226、14本塁打で、盗塁はわずか1つだった。
ヤクルトの元トレーナーは、「山田は決して恵まれた体格ではありません。トリプルスリーを3度達成したことで体に大きな負荷がかかっていたことは間違いない。本人にその自覚はないと思いますが、何度も限界を突破したことで生命線だった体のキレが失われているように感じます。近年コンディション不良で苦しんでいるのは蓄積疲労の影響が間違いなくあるでしょう。休養しても元のコンディションに戻るとは限らないですし、休みすぎると練習量が落ちて下半身の粘りがなくなってしまう。調整法で試行錯誤しているように感じます」と指摘する。