
天皇、皇后両陛下は6月9日、ご結婚から32年の記念日を迎えた。おふたりの出会いは1986年のスペイン王女歓迎茶会。交際が途切れたこともあったが92年夏に再会、数カ月後の年末には、皇太子だった陛下は鴨場で、「僕が一生、全力でお守りします」と、雅子さまにプロポーズをした。雅子さまが大学生であった時期からご結婚の直前まで、およそ10年にわたり美容師という立場から雅子さまを支えた、多田修さんが思い出を振り返る。
「ソバージュはいかが?」の勧めも・・・ワンレングスが美しい婚約時代の雅子さま!





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「ソバージュは、どうですか?」
西麻布に店舗を構える美容院「ヒロイン」で、リラックスする雅子さま(当時は小和田雅子さん)に、多田さんはそう提案したことがある。
バブル経済は崩壊していたものの、まだまだ世間ではソバージュヘアも好まれていた。
雅子さまは、「まあ…」とほほ笑みながらさらりとかわし、実現することはなかった、と多田さんは苦笑した。
雅子さまが、妹さんの紹介で多田さんが務めるこの美容室に通い始めたのは、まだ大学生だったころ。雙葉中高時代の雅子さまの同級生も多く通う店だった。雅子さまの外務省時代から、お妃候補として注目を集め、そして皇太子さま(当時)からのプロポーズから婚約の時期まで、多田さんは雅子さまを美容師して支えた。
雅子さまが外務省職員として英オックスフォード大学に留学することが決まると、
「現地でのヘアカットをどうしたらよいでしょうか」
と、雅子さまから相談を受けたこともあった。
海外のヘアカットは、日本と感覚がだいぶ違う。思わぬ髪型に仕上がり、仰天する失敗談も珍しくない。多田さんは、こうアドバイスをした。
「ボブカットを維持して毛先をそろえてもらうのが、いいと思いますよ」
1988年、英国に出発する雅子さまは、毛先をくるりと巻いたショートボブ・ヘア。留学中の雅子さまも、美しいボブヘアを維持していた。