「着衣泳」を学ぶ児童。服と靴を身につけたまま仰向けに浮いて救助を待つ=水難学会提供

プールの維持管理費も負担

 それに伴い、教員の負担も増えた。着替え場所の確保や、プール授業内容の保護者への説明など、以前よりもきめ細かな配慮が必要になった。

 プール設備の維持管理も頭の痛い問題だ。市内小中13校のプールにかかる年間補修費は260万円。水道代などの年間維持費は約1022万円。13校中、11校のプールは築30年以上が経過しており、改築を検討せざるを得ない施設が複数あるという。加えて、水量や水質の管理をする教員の負担も大きい。

プール普及は70年前の「悲劇」がきっかけ

 国の学習指導要領は、中学1、2年の水泳を「必修」とし、実技授業を行わないのは「水泳場の確保が困難な場合」としている。ただし、文部科学省・スポーツ庁の担当者は柔軟な見解を示す。

「確かに規定上はそう記されていますが、プール授業の継続については、水泳場の確保以外の要素も検討し、それぞれの自治体が判断するものだと思います」(スポーツ庁の担当者)

 国は、プール授業は、「水難事故」から子どもたちの命を守ることを大きな目的としている。

 全国の学校にプールが普及したきっかけは、1955年に連絡船「紫雲丸」が瀬戸内海で沈没した事故まで遡る。このとき、修学旅行中の児童・生徒100人や教員を含む168人が亡くなった。

 実は現在も、毎年30人前後の、中学生以下の子どもたちが水難事故で死亡・行方不明になっている。そのうち、河川での水遊びなどで事故に遭うケースが約6割を占める。

 スポーツ庁の担当者は、「各自治体には、水難事故防止の観点から、プール授業の重要性や学習機会の確保について、しっかりご検討いただきたい」と訴える。

消防署員が心肺蘇生法やAED使用法を教える

 滝沢市の場合、中学校の水泳の実技授業を取りやめる代わりに、小学校の水泳の授業を強化する。

 目標は「小学校6学年で25メートル泳げる」こと。スイミングスクールのインストラクターらの外部人材と連携する。安全指導については、河川や用水路に着衣のままで落ちた場合を想定して、「着衣泳」の実施を徹底する。

 また中学校で、消防署員が心肺蘇生法やAEDの使用方法などの実技を生徒に教えるという。

「修了者には、独自に受講証明書を発行して、生徒の水の事故に対する意識を高めていきたい」(同市教委の担当者)

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