不動産をめぐる強引に契約が問題になっている(写真はイメージ=GettyImages)
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 ひとり暮らしの高齢者の持ち家やマンションが不当に安い価格で「押し買い」され、賃貸借の「リースバック」契約を結ばせてトラブルとなる事例が増えている。自宅に突然やってきた営業マンが半日にわたって居座って強引に契約したり、数年に限った賃貸借契約を結んで「終の棲家」を失ったりするケースも起きている。契約上は「売り手」である高齢者を保護する法律上の仕組みは少なく、専門家らは安易に契約をしないように呼びかけている。

【図表】リースバックのメリットとデメリットの解説はこちら

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「家を売りませんか。いい条件ですよ」

「これから税金がかからなくなりますよ。面倒なことは一切なくなりますよ」

 80代の女性が一人で住む東京・新宿区のマンションに、不動産の営業マンを名乗る2人組の男性が訪れたのは、昨年8月のことだった。

 持ちかけられたのは、所有しているマンションを売却して、代わりに賃貸借契約を結び、家賃を支払いながら住み続けることができる「リースバック」。

 そのつもりはなかった女性は断ったが、2人組はなかなか帰ろうとしなかった。

「10年は売ったお金で過ごせる」

「売却してもそのままそこに住み続けられますから」

 女性を押し切って上がり込んだ一人は、約8時間にわたって室内に居座った。そして女性は押し切られる形でマンションの売却とリースバックの契約を交わしたという。
 

 その契約から約1か月後 、契約について耳にしたマンションの管理人が不審に思い、地域包括支援センターを通じて、女性と離れて暮らしている甥に連絡をした。。

 そして契約内容を確認したところ、女性にはかなり不利な条件だったことがわかった。

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