この問題をめぐって被害者の救済に取り組む「高齢者・障害者の不動産押買被害対策弁護団」所属の葛山弘輝弁護士(ひかり総合法律事務所・東京都)によると、被害者の多くが、親族が近くに住んでいない高齢者、特に女性だという。
都消費生活相談センター相談課長の高村淳子さんは、
「不動産の契約はひとつでも大変なのに、売買と賃貸借という二つの契約を同時に、しかも80代の高齢者が一人で対応するなんて無理があります」
と指摘する。
さらに「被害」が増える懸念も
リースバック契約をめぐる相談はさらにこれから増えてくると、高村さんは予想している。
トラブルが増え始め、国土交通省が消費者向けに「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表したのが2022年。そのころに契約を結び、契約の更新時期を迎える人が増える時期になっている。
これから増加すると懸念されているひとつが、契約更新に伴って家賃の値上げを求められるケース。そして、リースバックで結んだ賃貸借契約が「定期借家契約」となっており、一定期間が過ぎた結果、自宅からの退去を求められるケースだ。
契約時に口頭で「このまま自宅に住み続けることができる」と説明されていたとしても、実際の契約は住み続けられる期限が定められている定期借家契約となっていたケースが少なくないのだという。
そして、不利な契約だったことがわかって解除しようとしても、当事者が高齢者のために契約内容を覚えていなかったり、理解していなかったり、そもそも手元に契約書がなかったりするため、業者との交渉が容易に進まないケースは珍しくないという。
国民生活センターは5月、「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意! 本当に『そのまま“ずっと”住み続けられる』契約ですか?」というリリースを発表。「押し買い」と「リースバック」についてのトラブル事例を紹介しながら、安易な契約をしないよう注意を呼びかけている。
(AERA編集部・大崎百紀)
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