
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
お笑いコンビ、ティモンディの前田裕太による書き下ろしエッセイ『自意識のラストダンス』。初の著書。甲子園に出場できず、弁護士になれないまま芸人の道を選んだ前田は、相方の高岸宏行とキャッチボールをしながら、地下ライブで経験を積み、テレビ番組のオーディションに合格する。仕事もお金も手に入ったが、注目されるのはいつも相方。自尊心を削られ、幸福とは何かを求めてフィンランドに旅立つ。前田さんに同書にかける思いを聞いた。
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テレビ番組で頑張っても、画面に映るのは相方ばかり。知名度にも差がつき、マネージャーに間違われることもある。お笑いコンビ、ティモンディの前田裕太さん(32)は、「やればできる!」と叫ぶ相方の高岸宏行さん(32)の隣で自己肯定感をこじらせ、円形脱毛症になってしまった。
しかし、自分には仕事もお金もあるのだから幸せなはず。いったい幸せとは何なのかを探してフィンランドに向かい、踊りながら号泣するまでの顛末をエッセイにつづった。
自尊心が揺らぎ始めたのは甲子園出場の夢に破れた時だった。愛媛県の強豪校、済美高校で厳しい練習に耐えたのに県大会決勝で敗退。生きる目的も意味も失った。
大学では一転、司法試験を目指すが、2次試験になかなか受からない。そんな時、相方から芸人の道に誘われる。