その目的は、共用部の適切な管理だ。具体的には、管理組合が、マンションの維持と修繕、財政(管理費や修繕積立金の管理)の責任を負う。専有部分は個々人の資産だが、エントランスやエレベーター、内廊下、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場などはすべての区分所有者の共有財産。

 それらを適正に管理するために組合が設置され、組合の業務執行機関として理事会が組織されるのだ。理事会メンバーは、輪番制ないしは立候補制のどちらかで選出され、月に1回程度の理事会を開催しながら業務を執行するのが一般的だ。竹中さんは2020年から21年にかけての1年間、理事長を務めた。

 近年、このマンション管理をめぐるトラブルが増えている。公益財団法人マンション管理センターによると、マンションの住民や管理組合、管理会社から寄せられる相談件数は年々増加傾向にあり、2023年度は過去最多となった。なかでも多いトラブルは、「居住者間のマナー」や「建物の不具合」「費用負担」だ。

後を絶たない騒音の苦情

 竹中さんも次のように話す。

「タワマンは建物全体の重量を軽量化するために、コンクリートの湿式壁ではなく、石膏ボードを使用した乾式壁が採用されているので、遮音性が低め。だから、騒音の苦情は後を絶ちませんでした。隣の洗濯機の音がうるさいと言われたら、管理人といっしょに音漏れについて調査して、洗濯機の下に防音マットを敷くよう勧めたりしました」

 ほかにも「掃除機をかけるたびに隣の人が壁を叩いてくる」というトラブルもあったという。

「『静音仕様の掃除機に買い替えても、やっぱり叩かれるのでなんとかしてほしい』と。理事会は住人同士の争いに介入できないんです。最終的に壁を叩かれていた側の住民は転居してしまいました……」

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